クワズイモは人気の高い観葉植物のひとつですが、毒性があります。手入れする際、また犬や猫を飼育しているご家庭では、取り扱いには注意が必要です。そこでこの記事では、安全にクワズイモを育てるために知っておきたいクワズイモの毒性と、中毒を起こした際の対処方法をご紹介します。
クワズイモはどんな植物?
クワズイモはハート型の可愛らしい葉っぱが印象的です。成長が早く、また花言葉が「復縁」や「仲直り」とポジティブなことから、観葉植物として人気があります。
クワズイモの育て方については、こちらの記事をご覧下さい。
インド原産のサトイモの仲間であるクワズイモは種類が多く、日本では気温の高い九州や沖縄、四国といった地域で、およそ60種が自生しています。
クワズイモには強力な毒性がある
クワズイモはサトイモの仲間ですが、強い毒性があり「食わず芋」の名の通り食べられません。それどころか、葉や茎を切ったときに出る汁に触れるだけで、かぶれや痺れといった症状が出ます。
クワズイモの手入れをする際は直接手で触れずにゴム手袋を着用
するほか、小さなお子さんや犬猫のいるご家庭では、誤飲や誤食に十分な注意が必要です。
クワズイモの毒性とは
クワズイモにはシュウ酸カルシウムが含まれています。
シュウ酸カルシウムは、日本の法令では「毒物及び劇物取扱法」によって劇物に指定される物質です。厚生労働省は公式サイト内の「自然毒のリスクファイル」のなかで自然毒を持つ注意すべき植物のひとつとしてクワズイモを掲載し、注意喚起しています。
シュウ酸カルシウムによる中毒症状
シュウ酸カルシウムは、針状の結晶体です。水に溶けにくい性質があるため、クワズイモの葉っぱや茎、根の中で溶けません。
そのため樹液に触れたり、誤って口に含んだりすると、皮膚や粘膜に針が刺さったような強い痛みを生じます。またひどい場合はかぶれや痺れ、水ぶくれ、むくみのほか、一過性の言語障害や下痢、出血を伴う嘔吐といった中毒症状を呈することもあるため、注意が必要です。
クワズイモの毒による食中毒の事例
クワズイモの毒による食中毒は、大きく分けて次のパターンがあります。
- 食用できる他の植物と勘違いして食べた
- ペットが誤って食べた
- 世話をする際に素手で触れた
ここでは厚生労働省のホームページで公表されている食中毒の事例をご紹介します。
観賞用のクワズイモの茎が食用の芋類に混入した事例
イベント会場で観賞用として販売されたクワズイモの茎が、誤って食用の芋に紛れ込む事例が発生しました。有毒なクワズイモが混入しているとは知らずに調理して食べた人に、食中毒の症状が出た事例です。
自生していたクワズイモがサトイモに混入した事例
スーパーで購入したサトイモの茎にクワズイモの茎が混入していた事例です。知らずに食した2名のうち2名ともに、口の中にイガイガした痛みの症状を訴え、病院で治療を受けています。
この事例では、クワズイモが自生している場所でサトイモを栽培しており、収穫の段階で混入したことが原因です。
参考元:自然毒のリスクプロファイル:高等植物:クワズイモ(厚生労働省)
クワズイモと同じ毒性のある植物
クワズイモに含まれる毒であるシュウ酸カルシウムを含む植物には、次のようなものがあります。
- ディフェンバキア
- モンステラ
- リュウゼツラン
<野草>
- かたばみ
<食用の植物>
- ヤマイモ
- サトイモ
- タロイモ
- ほうれん草
- 未成熟のパイナップル
植物は動くことができないため、外敵から身を守るための自衛手段として毒を持っているものがあります。クワズイモのシュウ酸カルシウムもそのひとつです。食用にされている植物の場合、シュウ酸カルシウムの含有量がごく少量であるほか、アクをとることによる毒抜きや加熱調理といった方法で毒の影響を抑えています。
クワズイモに似た植物との見分け方
クワズイモと姿形が似ているために誤食しやすいのが、サトイモとハスイモです。いずれもサトイモ科の植物で、葉の形状や大きさが酷似しています。
クワズイモ
サトイモ
ハスイモ
【クワズイモ・サトイモ・ハスイモの違い】
シュウ酸カルシウム | 食用 | 可食部 | |
クワズイモ | 含まれる | 不可 | 毒性があるため不可 |
サトイモ | 微量だが含まれる | 可能 | 根 |
ハスイモ | 含まれない | 可能 | 茎 |
サトイモは根(芋)を、ハスイモは茎の部分を食べることができます。一方のクワズイモは一部地域で薬用に使われるものの、一般的には食用できません。
しかし外観からクワズイモとサトイモ、ハスイモを見分けるのは困難です。自生している植物には安易に触れないこと、また口にしないことが、身を守るための最善策と言えます。
クワズイモの毒でかぶれたときの対処法
クワズイモに含まれるシュウ酸カルシウムは食中毒を起こすほか、樹液に触れたことでかぶれやヒリヒリした痛みを伴うことがあります。
誤ってクワズイモの樹液に触れてしまったときは、すぐに石けんを使って洗い、大量の水で皮膚に付着した樹液を丁寧に取り除いてください。樹液が付着して炎症を起こしている箇所を擦らないように注意しながら、乾いたタオルで水気を拭き取ります。
赤みやブツブツ、かゆみであれば、ステロイド外用剤を塗布することで症状は改善するとされています。しかし体質や体調によってはすぐに状態が改善しないことや、悪化する可能性もないとは言い切れません。不安がある場合は、専門医を受診することをおすすめします。
またやけどのように水ぶくれになっているときは、樹液を洗い流したらすぐに医療機関を受診してください。
クワズイモを安全に取り扱う方法
クワズイモの毒は樹液に触れたり、口に含んだりすることで害を及ぼします。そのため直接クワズイモに触れないように注意することで、安全に手入れすることが可能です。
クワズイモの手入れをするときは、次の点に注意してください。
- クワズイモには直接触れない
- 手入れをするときはゴム手袋をつける
- クワズイモを口に入れない
特に小さなお子さんがいるご家庭やペットの犬猫を飼育している場合は、クワズイモを誤って口にしないように配慮することが大切です。
また一部では民間療法の一環でクワズイモを利用するケースもあります。ただクワズイモの毒性を考慮するなら、生薬として取り扱う場合は医師や薬剤師にあらかじめ相談するべきでしょう。
犬や猫がクワズイモを食べるとどうなる?
クワズイモはアメリカの動物虐待防止協会、ASPCAの公式サイトのなかで、動物にとって危険な植物として注意喚起されている植物のひとつです。
犬や猫がクワズイモを噛んだり触れたりすると、次のような中毒症状
が現れます。
- 口内炎
- 口唇炎
- 皮膚炎
- 嘔吐
- 呼吸が荒くなる
- よだれが多く出る
具体的な中毒症状は犬や猫の種類やクワズイモに接触した箇所、状況、毒に触れた度合いによって異なるため、一概にはいえません。犬や猫は人より体が小さく解毒機能も弱いため、人間よりも重い症状が出るケースもあります。
犬や猫がクワズイモを食べてしまったときの対処法
犬や猫がクワズイモに触れた、もしくは誤って食べてしまったことに気づいたら、速やかにかかりつけの動物病院に連絡して対応指示を仰いでください。
犬や猫は大切な家族です。取り急ぎ、応急処置を施したいと思うこともあるでしょう。しかし犬や猫にクワズイモの中毒症状がでている場合の処置に対する判断は難しく、誤った応急処置をした場合、生命に危険が及ぶ恐れもあります。
犬や猫に異変が起きていることに気づいたら、自己判断で応急処置をおこなうのは危険を伴うことも多々あります。まず動物病院の医師に相談してください。
犬や猫がクワズイモを誤って食べない工夫
犬や猫を飼っているご家庭でクワズイモを育てる場合は、置き方や置く場所に工夫が必要です。次のようなアイデアをお試しください。
- 棚の上のように高い所に置く
- 天井から吊るす
- 壁に掛ける
- 植木鉢にカバーをする
犬の場合は、高い所に置くことで誤ってクワズイモに触れたり誤食したりといった危険を回避しやすくなります。猫の場合は高い所でも登ることができるため、家具を伝って飛び上がれない位置で天井から吊るしたり壁に掛けたり、といった工夫が必要です。
また植木鉢にカバーをかけておくと、より一層安心してクワズイモを飼育できるのでおすすめです。
クワズイモを安全に育ててハッピーを呼び込もう
クワズイモは出世芋という別名やハート型の葉の形状から、風水でも運気を上げる植物とされています。縁起が良い観葉植物として人気があるクワズイモは、葉が大きいことから蒸散作用が期待でき、生きた加湿器として室内環境を整える役割も担います。
クワズイモには毒性がありますから、取り扱いには注意が必要ではあるものの、直接触れなければ何ら問題はありません。手入れするとき、また犬や猫を飼育している場合は一工夫を加えてクワズイモを元気に育て、運気を呼び込みましょう。