クワズイモは大きな「芋」の見た目から愛好家の多い観葉植物です。生命力が強く頑丈なため、ちょっとしたコツを押さえるだけで初心者もしっかり育てられます。今回はクワズイモの育て方と枯らさないためのコツ、ありがちなトラブルと対処法まで一挙にご紹介します。
食べられない芋「食わず芋(クワズイモ)」
クワズイモは、サトイモ科・アロカシア属(和名:クワズイモ属)の観葉植物です。中国・インドを中心とするアジア地域がおもな原産地の植物で、日本でも四国・沖縄・九州など温暖な地域に生育しています。
地面から顔を出した根茎がいかにも「芋」のように膨らむのですが、実は毒である「シュウ酸カルシウム」が豊富に含まれています。ついた名前は「食わず芋(クワズイモ)」、その名の通り食べられない芋です。
観葉植物界隈では、特徴的な根茎を楽しめることから鑑賞効果の高い植物として知られています。
別名「出世芋」と呼ばれる縁起の良い観葉植物
クワズイモは生育スピードが非常に早く、環境を整えてあげるとあっという間に大きくなります。
あまりにもグングンと育つ様子から、別名として「出世芋」と呼ばれるほどです。育てていて楽しいだけでなく、出世につながる縁起の良い植物としても人気があります。
また、花言葉も「復縁」や「仲直り」とポジティブな内容で、こちらも縁起が良いです。そっと室内に置いておくだけで、幸運をもたらしてくれるかもしれませんね。
子どもが傘にできるほど大きな葉っぱ
芋の部分(根茎)ばかりを注目されがちなクワズイモですが、葉っぱにも魅力が詰まっています。ハートを思わせる愛らしい形の葉っぱは、最大で60cmほどにまで成長します。
60cmと言えば、小さな子供が使う傘程度のサイズです。まるで絵本に出てくる物語のように、子どもが傘にできるほどの葉っぱは圧巻で、実物を見ると圧倒されますよ。
葉っぱも根茎も楽しめる、インテリア効果の高い観葉植物として育ててみてはいかがでしょうか?
クワズイモの育て方!必要な生育環境と枯らさないコツ
それではクワズイモの育て方を見ていきましょう。クワズイモは比較的頑丈で、初心者でも枯らしにくい種類です。
必要な生育環境をしっかりとチェックして、挑戦してみてくださいね。
日光はしっかりと浴びせてあげる
クワズイモは日光をとても好む植物で、日当たりを意識してあげれば屋内・屋外どちらでも元気に育ちます。
屋外で育てる場合には、よく日が当たる風通しの良い場所に設置しましょう。基本的に、クワズイモは直射日光へも強い種類です。
しかし、それでも「葉焼け(日光が強すぎて葉の細胞が死滅する現象)」を起こす場合には、もう少し日差しの弱い場所に移動するか、遮光ネットを使って日光を弱めてあげると安心です。
屋内では、直射日光が届く風通しの良い場所に設置します。万が一、葉焼けの傾向が見られる場合には、レースのカーテンなどで適時遮ってあげましょう。
水はけの良い土を
土に関してはそれほど心配する必要がなく、水はけの良い土を選べば大丈夫です。
ホームセンターや通販で市販されている土から、水はけの良いものを選びましょう。
水やりはたっぷりと
クワズイモは水を大量に求める植物のため、植木鉢の土が乾いた段階でたっぷりと水をあげます。水の量は、植木鉢の底から流れ出るほど多く与えて大丈夫です。
ただし冬だけは、クワズイモの成長が緩やかになるため、あまり水を与えてはいけません。大幅に頻度を落として、1週間に1~2回水をやる程度にまで抑えましょう。
春~秋は肥料も与える
クワズイモの成長が活発な春~秋、特に春~夏にかけては、肥料も与えましょう。肥料を与えるとより早いスピードで成長しますから、育てていて楽しいですよ。
市販の液体肥料を2週間に1回与えるか、あるいは置き肥を与えればOKです。
時々は剪定してあげよう
クワズイモはグングン育つ観葉植物ですから、葉っぱも次々と生えてきます。タイミングを見て古くなった葉っぱを剪定してあげると、より大きく健康に育ちますよ。
古い葉っぱの見分け方は、
- 下の方に生えているか
- 黄色っぽくなるなど変色していないか
- 垂れ下がるなど元気がない様子ではないか
の3点から総合的に判断します。初心者の内は、明らかに古そうな葉っぱを剪定してあげるだけでも大丈夫です。
使い捨ての掃除用ゴム手袋などを活用して、直接肌に触れないようにしましょう。
クワズイモにありがちなトラブルと対処法
クワズイモは、頑丈で生命力も強く育てやすい植物です。
あまり心配する必要はありませんが、いざというときに慌てないためにも、クワズイモを育てる際にありがちなトラブルと対処法も知っておきましょう。
ハダニなどの害虫
クワズイモを枯らしてしまう原因として、もっとも気をつけたいのは「害虫」です。ハダニ、カイガラムシなどクワズイモにつきやすい害虫を放置すると、クワズイモの栄養を吸い取り、やがては枯らしてしまいます。
大量繁殖で手がつけられなくなる事態を防ぐためにも、見つけた段階で速やかに駆除しましょう。駆除には水で洗い流す、ピンセットやテープで取り除くといった方法があります。
また、予防としておすすめしたいのが、「葉水」と「化成肥料」です。
葉水は、葉っぱの表裏に霧吹きなどで水を吹きかけるお手入れです。ハダニは葉っぱが乾燥しているとつきやすい害虫ですから、頻繁に葉水で葉を濡らしてあげるだけで劇的に数を減らせますよ。
もちろん葉水には単純に葉っぱが喜ぶ効果もありますから、一石二鳥です。大きな葉っぱを楽しむついでに、小まめに葉水を行いましょう。
化成肥料は肥料の一種で、有機由来ではない化学成分によるものを指します。化学成分の肥料と聞くと、「有機の方が良いのでは?」と感じるかもしれませんね。
確かに栄養価では有機の方が優れているケースも多いのですが、有機肥料は虫にとっても絶好の栄養・繁殖場所なのです。
場合によっては、有機肥料自体に虫の卵や幼虫が混ざっていることもあり、虫対策の面では化成肥料の方が優れています。
クワズイモ自体はそこまで虫が繁殖しやすい植物ではなく、適切に予防してあげれば大丈夫です。小まめな葉水と化成肥料の使用を心がけましょう。
軟腐病
軟腐病とは、クワズイモの芋部分(根茎)が細菌によって腐り落ちる病気です。切り傷など細菌の侵入経路があった場合にかかってしまいます。
原因が細菌ですから、クワズイモ内部で次々と健康な部分にも感染する恐ろしい病気です。軟腐病で腐った部分を確認次第、すぐに切り離す必要があります。
根腐れ
根腐れとは、鉢のなかで水が滞るなどして根っこから腐り落ちる病気です。クワズイモに限らず、初心者が観葉植物を枯らしてしまう際には、この根腐れが原因の場合がよくあります。
もっともありがちなのは、元気に育てようと頻繁に水を与えすぎて、根っこが酸欠状態に陥り根腐れするパターンです。水は、あげればあげるほど良いものではなく、水やりをせず植物に「呼吸」させる時間も作らなければいけません。
徒長
徒長(とちょう)とは、「不適切なほど無駄に成長させてしまうこと」を意味する園芸用語です。
観葉植物を健康に育てるためには、日光・水やり・肥料・風通しなど、各種生育環境を整えてあげる必要があります。この生育環境がうまく整えられないと、徒長などさまざまな不調が起こりかねません。
クワズイモの場合は、徒長が起こると茎の部分が異様に長くなり、葉が過度に垂れ下がる、やがては茎が折れるなどの不調に見舞われます。発生後の対策としては、茎が伸びすぎてきた段階で剪定してあげましょう。
生育環境ミスのなかで、日光の不足がもっとも徒長を引き起こしやすいといわれています。特にクワズイモは日光を好む植物のため、充分に日に当ててあげましょう。
クワズイモの植え替え方法
最後に、クワズイモの植え替え方法についてもご紹介します。グングン育つクワズイモは、適切なタイミングで植え替えをしてあげないといけない植物です。
植え替えを怠ると根腐れが起こりやすくなりますので、しっかりと行いましょう。
植え替え頻度は2年に1回
クワズイモの適切な植え替え頻度は2年に1回です。暖かい5~7月であればダメージが少なく、軟腐病のリスクも下がりますので、できるだけこの時期を選択しましょう。
植え替えは難しいものではなく、まずはゴム手袋をしてそっと鉢からクワズイモを取り出します。根っこについた土を少し払ったあと、古くなったり腐ったりしている根っこがあれば取り除き、新しい植木鉢に移すのみです。
移し終えたあとは水を与えて、鉢のなかでクワズイモがしっかりと固定されるように意識しましょう。
増やしたいなら挿し木・株分けを
もしクワズイモの数を増やしたいのであれば、「挿し木」か「株分け」を行います。
挿し木は、クワズイモから切り取った茎を新しい植木鉢に植え、根が生え育つのを待つ方法です。
注意点は切り取りに使うハサミなどをしっかりと消毒しておくこと、切り取った茎は半日ほど日陰で乾かすことで、比較的簡単に行えます。
ちなみに、徒長によって茎が伸びすぎたときに切った茎を、挿し木用の茎として使っても大丈夫です。
株分けは芋部分(根茎)にできる子株を切り離し、新たなクワズイモとして鉢に植える方法です。切り取った子株を植えたあとは、10~20日ほど日陰で少量の水を与えつつ育てるとうまくいきます。
環境を意識してクワズイモをすくすく育てよう
クワズイモは、芋のような見た目と大きなハート型の葉っぱが愛らしい鑑賞効果の高い観葉植物です。
見た目の印象を裏切らず頑丈で、日光や水やりにさえ気をつけてあげれば、初心者でも元気に育てられますよ。本記事を参考に、ぜひ挑戦してみてくださいね。