「お気に入りの植物にカイガラムシが繁殖してしまった!」「家にあるものを使って上手に駆除したい」そんな方に向けて、この記事ではカイガラムシの駆除方法を解説します。駆除前に知っておくべき知識や効果の高いおすすめ薬剤もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
カイガラムシの駆除前に知っておきたい基礎知識!
さまざまな園芸関連の害虫のなかでも、ハダニと並んで特にやっかいなのがカイガラムシです。
カイガラムシは体長数mmほどと小さな、セミやカメムシの親戚にあたる昆虫です。
400種類を超えるほど品種が豊富で、室内外を問わず植物にくっついて悪さをすることから、園芸趣味の大敵として恐れられています。
カイガラムシの正しい駆除方法を知ることは、園芸を安心して楽しむために欠かせません。まずは、駆除前に知っておきたいカイガラムシの3つの基礎知識から見ていきましょう。
- 放置は絶対にNG
- できるだけ幼虫の段階で駆除する
- 成虫は物理的な駆除方法が必要
放置は絶対にNG!大量繁殖して観葉植物が枯れることも
最初に覚えておきたいのが、カイガラムシは一匹でも見かけたのなら絶対に放置をしてはいけないことです。
カイガラムシは小さな虫ですが、大量繁殖する性質を持ちます。
「観葉植物の葉をめくってみると、裏側にびっしりとカイガラムシが並んでいた…」なんてことにならないよう、一匹でも見かけた段階で早期駆除が必要です。
大量繁殖したカイガラムシは植物の樹液を吸い、栄養失調に陥らせたり、病気をうつしたりします。見た目に気持ち悪いだけでなく、植物が枯れることもあるため気を付けましょう。
5~7月の暑い時期に幼虫の段階で駆除する
カイガラムシの駆除は5~7月の暑い時期に、幼虫の段階で行うのがベストです。カイガラムシは成虫になると身体が殻やロウで覆われて、薬剤が効きにくくなってしまいます。
幼虫の時期であれば薬剤がしっかりと効果を発揮できるため、市販の駆除剤を撒くだけで簡単に退治できます。
毎年カイガラムシに悩まされている方は、この時期に根こそぎ駆除することを意識してみてください。
秋や冬の成虫は物理的な駆除が有効
秋や冬を迎えて成虫のカイガラムシが繁殖してしまった場合は、物理的に取り除く必要があります。具体的にはテープでペタペタと捕まえたり、歯ブラシでこすり落としたりします。
残念ながら、成虫のカイガラムシを薬剤だけで完全に駆除することは困難です。
「幼虫は薬剤やスプレーで簡単に駆除できる、成虫は物理的にも退治する」と覚えておいてくださいね。続いて、カイガラムシの具体的な駆除方法を見ていきましょう。
カイガラムシの効果の高い駆除方法!家にあるものなら「牛乳」が◎
カイガラムシに効果の高い駆除方法は、以下の6種類です。
- 牛乳をスプレーする
- 木酢液や竹酢液をスプレーする
- マシン油をスプレーする
- 市販の薬剤を使用する
【成虫向け】
- 歯ブラシなどでこすり落とす
- 大量発生した部分を剪定する
家にあるもののなかでは、牛乳が手軽かつ高い効果を発揮します。それぞれ順番に見ていきましょう。
牛乳をスプレーする
小さな子どもやペットがいるなど、薬剤を使用したくない方にもぴったりなのが牛乳をスプレーする方法です。
- 市販のスプレーボトルに余った牛乳を入れる
- 植物に付着したカイガラムシ全体に吹きかける
- カイガラムシが死んだ後に、今度は水を吹きかけて掃除する
吹きかけられた牛乳は膜となり、カイガラムシを窒息死させます。最後に水を吹きかけて、植物を洗うことを忘れないようにしてください。
木酢液や竹酢液をスプレーする
木酢液(竹酢液)とは、木材(竹材)を作るときに出る煙を冷やして液体にしたものです。菌や害虫を殺す成分が入っており、幼虫のカイガラムシにも効果は抜群です。
木酢液(竹酢液)は園芸ショップやホームセンターで市販されており、用法に記載されている希釈率(100~1000倍など)に水で薄めてからスプレーします。
- 口の広めな容器に木酢液(竹酢液)を入れ、水で希釈する
- スプレーボトルに希釈した液体を入れる
- 植物にまんべんなく吹きかける
マシン油乳剤をスプレーする
マシン油乳剤とは石油系の化学殺虫剤の一種です。油の成分が害虫を窒息させたり、体内に浸透したりして駆除効果を発揮します。
マシン油乳剤の使い方は木酢液とほぼ同様です。園芸ショップやホームセンターで購入し、規定量の水で希釈して使用します。
- 口の広めな容器にマシン油乳剤を入れ、水で希釈する
- スプレーボトルに希釈した液体を入れる
- 植物にまんべんなく吹きかける
マシン油乳剤はカイガラムシの予防にも効果があるといわれています。自慢の植物をカイガラムシから守ってあげられるでしょう。
市販の薬剤を使用する
そのほか、カイガラムシ駆除用に提供されている市販の薬剤を使うのもおすすめです。
市販の薬剤は「スプレー」と「粒」の2種類に大きく分かれており、以下の通り特徴が異なります。
- スプレー:そのままトリガーを引いて吹きかけるだけでOK。非常に手軽で便利
- 粒:あらかじめ土に混ぜ込んでおく。効果が長期間持続するのが嬉しいポイント
すでにカイガラムシが大量発生している方はスプレーを、今後の発生を予防したい方は粒を選びましょう。
歯ブラシなどでこすり落とす
上述の通り、成虫になってしまったカイガラムシには物理的な駆除が必要です。具体的には歯ブラシやたわしでこする、ガムテープでペタペタと取り除くといった方法があります。
難しい手順はなく、目視でカイガラムシを確認しながら一匹ずつ駆除していきます。地道な作業ですが、大切な植物を守るために根気よくこなしていきましょう。
大量発生した部分を剪定する
「ここまでの方法を試してみたが、上手にカイガラムシを駆除できない…」
「植物の一部分だけに、異様にカイガラムシが繁殖している」
上記に当てはまる場合は、思い切ってカイガラムシの多い部分を剪定してしまう手もあります。
- 自分の植物の剪定方法を調べる
- 根元から枝を切るなど、自分の植物に適した方法で大量繁殖した部分を取り除く
- 取り除いた枝はビニール製のゴミ袋などで必ず完全に密閉する
剪定は劇的な効果を見込めますが、植物の健康状態にも影響の出やすい諸刃の剣です。まずは、ほかの駆除方法から試してみてくださいね。
逆効果なことも?やってはいけないカイガラムシの駆除方法
続いて、植物を傷つけてしまうかもしれない「やってはいけないカイガラムシの駆除方法」を見ていきましょう。
お湯(熱湯)をかける
特に避けておきたいのが、お湯(熱湯)をかけることです。
ゴキブリやムカデなどの身近な害虫が熱湯で死ぬことから、カイガラムシにもついつい試したくなりますが、これは危険です。
確かにカイガラムシは熱湯で退治できますが、ぴったりと植物にくっついている関係上、苗にも大量のお湯がかかってしまいます。
火傷や水のやり過ぎにより、かえって植物を痛めてしまうため気をつけましょう。
アルコール(お酒)をかける
飲みかけの日本酒やウイスキーなど、手元にあるアルコール(お酒)をかけることもNGです。
お酒をかけると植物が枯れてしまったり、甘い香りに釣られてアリなどのほかの害虫が湧いたりします。これでは仮にカイガラムシが駆除できても意味がありません。
洗濯洗剤をスプレーする
家にあるもので何とかしようと、洗濯洗剤をスプレーするのも逆効果です。葉がしおれたり変色したりと、植物にさまざまなトラブルが発生します。
ただし、「殺虫に使える」とうたっている石けんであれば、適量に希釈してスプレーすることでカイガラムシを駆除できることがあります。
自分の使用している石けんの説明書を確認してみましょう。
カイガラムシ駆除におすすめの薬剤&殺虫剤6選
ここからは簡単に使えて効果の高い、カイガラムシの駆除におすすめの薬剤&殺虫剤をご紹介します。
牛乳などのスプレーでもカイガラムシの駆除はできますが、やはり効果が高いのは専門の薬剤です。カイガラムシの徹底的な駆除を目指すのであれば、ぜひ活用してみてください。
【住友化学園芸】殺虫剤 カイガラムシエアゾール
まずご紹介するのは、大型の庭木やバラを楽しんでいる方にぴったりな“カイガラムシエアゾール”です。
ジェット噴射機構により勢い良く薬剤が吹き出るため、手の届きにくい高い位置にある枝にもスプレーできます。
冬の成虫のカイガラムシにも使えるほど、強力な殺虫効果が期待できます。
殺虫成分には残効性(塗布後も殺虫効果が持続する性質)があり、1ヶ月間はカイガラムシの発生を抑えられます。手軽かつ強力な駆除&予防を実現できる1本です。
【住友化学園芸】殺虫剤 オルトランDX粒剤
『住友化学園芸』の“殺虫剤 オルトランDX粒剤”は、土に混ぜ込むタイプの殺虫剤です。
アセフェートとクロチアニジンと呼ばれる殺虫成分が配合されており、土を通じて枝葉に行き渡ることで、カイガラムシを退治します。
土の中を好むウネウネした幼虫など、カイガラムシ以外まで駆除できるのが嬉しいですね。
殺虫作用が強力な一方で、花や観葉植物はもちろん、口に入る野菜にも使えるほど人間に対する害は抑えられています。「あまり強い薬は怖いかも…」という方にもおすすめです。
【日本農薬殺虫剤】 マシン油乳剤(スケルシン)
水で適量に希釈してスプレーするのが、“マシン油乳剤(スケルシン)”です。
農林水産省にも登録されている(第19159号)正式な殺虫剤で、本来は駆除しにくい冬のカイガラムシ退治にも向いています。
天然由来成分から作られているため、ナチュラル志向な方も利用しやすいのが嬉しいポイントです。このアイテムで数を減らし、残りをテープや歯ブラシで完全に退治しましょう。
【住友化学園芸】殺虫剤 家庭園芸用スミチオン乳剤
『住友化学園芸』の“スミチオン乳剤”は、およそ60年近くの歴史を誇る有名殺虫剤です。
野菜や果樹、草花など幅広い植物に使用でき、その効果の高さと安全性からプロにも愛されています。
水で1,000倍や2,000倍に希釈してスプレーするため、1本で大量の植物をケアできます。アブラムシや毛虫など、色々な害虫が大量発生してしまっている方にもおすすめです。
【フマキラー】カダン カイガラムシ用 スプレー K
1年中使えて、希釈なしでスプレーするだけで良く、強風のなかでも狙った場所に散布しやすい、と嬉しい魅力が揃っているのが“カダン カイガラムシ用 スプレー K”です。
アレスリンとマシン油が配合されており、幼虫だけでなく成虫にも効果を発揮します。
余った薬剤は全量噴射できてキャップも簡単に取り外せるなど、ゴミ出しのしやすさも魅力です。
【アース製薬】おすだけアースレッド 無煙プッシュ イヤな虫用
「カイガラムシにつられて、アリやコバエが室内に大量発生してしまった!」というときに役立つのが、『アース製薬』の“おすだけアースレッド 無煙プッシュ イヤな虫用”です。
部屋の中心から室内に行き渡るようにプッシュすることで、殺虫成分が不快な虫を根こそぎ駆除&予防してくれます。
薬剤は一瞬で透明になって消えるため、燻煙剤のような掃除の手間もかかりません。
室内に害虫が湧いた場合、一度徹底的に駆除しなければ完全な退治は困難です。ほかのアイテムや牛乳スプレーでカイガラムシを倒し、その後の仕上げとして使ってみてくださいね。
カイガラムシの駆除にまつわるQ&A
最後に、カイガラムシの駆除にまつわるQ&Aをご紹介します。
重曹は効果がある?
重曹は消臭・汚れ落とし・ちょっとした虫退治に大活躍する便利なアイテムですが、カイガラムシへの効果は不明です。
重曹はアリの駆除に対しては有効に働きます。重曹の成分をアリが食べると、体内で酸(ギ酸)とアルカリ(炭酸水素ナトリウム)の化学反応が起こり、絶命するためです。
しかし、カイガラムシの場合はこのような効果は期待できません。家にあるものなら牛乳を活用するなど、ほかの駆除方法を検討しましょう。
天敵(テントウムシなど)で自然に駆除はできる?
カイガラムシの天敵にはテントウムシや寄生蜂が挙げられます。「天敵が自然にカイガラムシを駆除してくれたら…」と願いたくなりますが、残念ながらこれは困難です。
仮に見た目の可愛らしいテントウムシを使うとしても、室内を自由に飛び回ったり、カイガラムシ以外のエサばかりを食べたりと、なかなか思い通りには進みません。
さらに、テントウムシを食べるためにさらに大きな害虫がやってくるなど、別のリスクも高まります。別の方法で駆除をした方が安心です。
予防はどうすれば良い?
カイガラムシの発生方法は「風に乗って飛んでくる」と「衣服などに付着して持ち込んでしまう(室内の場合)」の2つがメインです。
そのため、予防では以下の対策を取り入れましょう。
- 葉水(葉の両面に霧吹きなどで水を吹きかける手入れ)を毎日行う
- 外出後は速やかに着替え、カイガラムシが付着していないか確認する
- 風通しと日当たりの良い、カイガラムシが繁殖しにくい環境に植物を置く
カイガラムシを駆除して安心して園芸を楽しもう!
この記事ではカイガラムシの駆除について、基礎知識や具体的な方法、効果の高いおすすめ薬剤とよくあるQ&Aをご紹介しました。
カイガラムシは成虫になると薬剤が効きにくくなるため、時期や状況を見極めた駆除が大切です。
「幼虫は薬剤で、成虫は物理的な方法も織り交ぜる」と意識しつつ、上手に駆除を進めてくださいね。