オモト(万年青)は400年以上の歴史を誇る古典園芸植物です。青々とした葉っぱを付けていることから人気があり、また縁起の良いエピソードが豊富で多くの人に愛されています。今回はオモトの特徴や枯らさないための育て方、トラブル時の対処方法や増やし方まで一挙にご紹介します。
古典園芸植物「オモト(万年青)」
オモト(和名:万年青)はキジカクシ科・オモト属の観葉植物です。日本・中国を原産地とする植物で、日本では「古典園芸植物(江戸時代から品種改良を繰り返された植物)」として知られています。
オモト(万年青)の名前は、青々とした凛々しい葉っぱを一年中鑑賞できることから命名されました。
多年草であるため葉が落ちない様は「長寿」を象徴すると考えられており、縁起の良い観葉植物として愛されています。
徳川家康が愛した観葉植物
オモトの縁起の良さを象徴するエピソードとして有名なのが、あの徳川家康と江戸城の話です。
かつて1606年に江戸城の本丸が完成した際、徳川家康は家臣(長嶋長兵衛)から3鉢のオモトを贈られました。家康は大層喜び、このオモトを飾って大切にしたそうです。
その後、江戸城を本拠地とする江戸幕府は、数百年という長期繁栄を成し遂げました。
現代でもこのエピソードにあやかり、引っ越し祝いとして、相手の幸運・繁栄を祈りオモトを贈る習慣が残っています。
邪気を払う縁起の良い植物
オモトは風水でも縁起が良いとされている植物です。鋭く青い葉っぱは邪気を切り払い、家庭内の運気を好転させると言われています。
「鑑賞して楽しむだけでなく、風水で運気も向上させたい」という方にぴったりですね。
置き場所にふさわしいのは、鬼門である北東の方角です。そのほか、新居の玄関に飾るのも非常に縁起が良いとされています。
1,000以上と豊富な品種
江戸時代から脈々と進められてきた品種改良により、オモトには1,000以上と多様な品種が存在します。
品種は、「大葉系」「薄葉系」「羅紗系(らしゃけい)」と3つの系統に大別可能です。
- 【オモトの品種】
- 大葉系:最大で40cmほどにまで成長する大型オモト。力強さを感じる風貌。
- 薄葉系:20cmほどの中型オモト。葉先が軽やかに曲がって育つのが魅力。
- 羅紗系:5cmほどの小柄オモト。小さなサイズ感が愛らしい。
どのオモトにもそれぞれ魅力が詰まっていますから、ぜひ自分好みのオモトを探してみてくださいね。
オモト(万年青)の育て方!必要な生育環境と枯らさないコツ
オモトは江戸時代から愛され続けてきた、とても縁起の良い観葉植物です。育て方もそれほど難しくなく、ポイントを押さえれば初心者でも存分に楽しめますよ。
オモトに必要な生育環境と、枯らさないコツを見ていきましょう。
西日の当たらない半日陰へ置く
もっとも大切なのが、日光を当てすぎないことです。オモトは耐陰性が強く、あまり直射日光を好みません。
一日の内、半分だけ日光が当たるような「西日が当たらない半日陰」へ設置しましょう。
特に気温が高い夏は、直射日光を避けるべきです。油断するとすぐに葉焼け(日光が強すぎて葉の細胞が死滅する現象)が起こってしまいます。
遮光カーテン・ネットを使って30~50%ほどの遮光を行い、それでも葉焼けの傾向が見られる場合は日陰に移しましょう。
ただしあまり陽の光を避け過ぎても、オモトは弱ってしまいます。
葉っぱの様子を見ながら、元気がない様子になったら日光に当てる、葉焼けが起こりそうになったら日光を避ける、と工夫してみてくださいね。
地植えでもよく育つ
オモトは、植木鉢を使わず「地植え」してもよく育ちます。庭を縁起良く、綺麗に飾りたいときにも向いていますよ。葉っぱが落ちないため、掃除の手間があまりかからないのも魅力的です。
地植えの場合も、できるだけ西日が当たらない半日陰へ設置しましょう。どうしても西日が当たる場合は、オモトが弱らない程度に遮光を行ってください。
またオモトは耐寒性の強い(-5度まで)植物ですが、それでも気温が10度を下回ると成長が緩やかになってしまいます。
グングン育つ様を楽しむために、なるべく冬でも10度以上を保てる場所に植えると良いですよ。
水やりは気温に合わせて
オモトの水やりは、気温が10度以上か以下かを基準に調整します。
オモトの成長が活発な10度以上では、しっかりと水を与えます。土の表面が乾いた段階で、植木の底から水があふれ出るほどたっぷり水やりを行いましょう。
成長が緩やかな10度以下では、あまり水を与えてはいけません。土の表面が乾いてから、2~3日後に水やりをする程度で十分です。
寒い時期に水をたくさん与えすぎると、根腐れ(水のやりすぎなどで根っこが呼吸できず腐る現象)のリスクが高まります。さらに樹液の濃度が下がるため、寒さにも弱くなってしまいます。
葉水は毎日行おう
水やりは気温に応じて行うべきですが、葉水は気温に関わらず毎日行いましょう。葉水とは、霧吹きなどを使って葉っぱの表裏に水を吹きかけてあげるお手入れです。
葉水には葉っぱを元気にするだけでなく、害虫を遠ざけたり葉の異変に早く気づけたりするメリットもあります。青々とした葉っぱを鑑賞するついでに、葉水を行うよう習慣づけられると素敵ですね。
葉っぱ1枚1枚に対して、「元気に育ちますように」と愛情を込めながらお手入れしましょう。
肥料は控えめに
オモトは徒長(不必要に特定の部位が育ちすぎる現象)のリスクが高い観葉植物ですから、あまり肥料を与えてはいけません。
成長が活発な春と秋に、液体タイプの肥料を2週間に一度与える程度でOKです。
土は水はけの良さを意識して
土にはそれほどこだわる必要がなく、水はけの良いものであれば大丈夫です。
ホームセンターや園芸店で市販されている、水はけの良い土を使用しましょう。
オモト(万年青)を育てる際にありがちなトラブルと対処法
オモトは昔から多くの人に愛されてきた観葉植物で、初心者の入門用としても広く楽しまれています。
枯らしてしまう心配も少なめですが、いざというときに慌てないように、ありがちなトラブルと対処法を知っておきましょう。
害虫の繁殖
もっとも警戒するべきは「害虫の繁殖」です。オモトにはハダニ・カイガラムシ・ナメクジなどの害虫が繁殖するおそれがあります。
害虫は葉や株から栄養を吸収するため、オモトの健康な生育を阻害します。場合によっては、栄養失調で枯れ落ちてしまうケースすらありますから、適切に対策しなければいけません。
害虫を確認した際には、水やりで洗い流したりピンセットやテープで取り除いたりしましょう。また、予防として「化成肥料」の使用もおすすめです。
化成肥料とは、有機を原料としない化学成分による肥料です。栄養価では有機肥料に劣るケースも多いのですが、虫が寄りつきにくく繁殖しにくい肥料として知られています。
もともとオモトは肥料(栄養)をそれほど必要とする観葉植物ではないですから、積極的に化成肥料を活用すると良いでしょう。
そのほか葉水も予防に有効ですから、忘れずに毎日行ってくださいね。
芋腐れ病(いもぐされ病)
芋腐れ病とは、傷口から菌やカビが入り込み根茎を腐らせる病です。放置していると感染部位がドンドン広がり、手遅れになることがあります。
予防としては、むやみに剪定を行ったりしてオモトに傷を作らないことが挙げられます。
もしかかってしまった場合は、症状の出た部分を消毒したハサミで速やかに切り離しましょう。一度鉢植えを中性洗剤で洗い、土を入れ替えるのも効果的です。
赤星病
赤星病は、葉っぱに赤やオレンジ色の斑点が現れ、やがては葉っぱが枯れ落ちる病気です。
斑点は徐々に大きくなり、ある程度のサイズになると小さな毛のようなものが生えてきます。この毛の先端から胞子が飛び、ほかの葉っぱや植物に移ってまた枯れさせる、と繰り返すため非常にやっかいです。
もしかかってしまった場合、駆除には専用の薬剤が必要となります。初心者であれば、発見した段階で、かかってしまった葉っぱを速やかに切り離すのも良いでしょう。
根腐れ
根腐れは、オモトに限らず初心者が観葉植物を枯らしてしまう際にありがちな現象です。
元気に育てようと一生懸命水をやりすぎると、根っこが酸欠状態に陥り、次第に腐ってしまいます。根っこが腐り落ちると栄養をうまく吸収できなくなり、やがては植物全体が枯れ落ちます。
観葉植物は、あまり構いすぎてもよくありません。ときにはお世話を我慢するのも愛情のひとつです。
オモト(万年青)の植え替え方法
オモトは葉っぱだけでなく根っこもよく成長しますから、ときどきは植え替えをしてあげる必要があります。
植え替えを行わないと根腐れにつながりますから、しっかりチェックしておきましょう。
植え替えは1~2年に一度
オモトに最適な植え替え頻度は1~2年に一度です。生育の活発な3~4月か9~10月に行うとダメージが残りにくいため、できるだけこの時期に行いましょう。
植え替え方法は単純で、以下の通りです。
- 【オモトの植え替え方法】
- そっと鉢から取り出し、根についた土を優しく取り除きます。
- 根を水洗いしながら、傷んだ根っこがないかチェックします。傷んだ根っこはハサミで取り除きましょう。
- 新しい鉢に土を入れ、オモトの根を少し広げるようにしながら植え付けます。
- バケツなど大き目の容器に水を張り、鉢ごと入れて水を全体に行き渡らせれば完成です。
増やすときには株分けを
もしオモトを増やしたいのであれば、株分けを行いましょう。株分けは植え替えと同じ時期に行うのがベストです。
植え替え同様の手順で傷んだ根っこを取り除いたあと、株を両手で優しくふたつに割きます。ポイントは、両方の株に健康な白い根っこが残るようにすることです。
割いたあとは植え替えと同様に植え付け、水を与えてあげましょう。
オモト(万年青)を上手に育てて幸運を呼び込もう
オモトはとても縁起が良く、品種も多様で育てるのが楽しい観葉植物です。育てる際には、「日光を当てすぎないこと」と「水やりを気温に応じて調節すること」を意識すると上手に育ちますよ。
初心者でも健康に育てやすい観葉植物ですから、このページを参考にぜひ挑戦してみてくださいね。