立枯病(タチガレビョウ)は、多くの植物に影響を与える病気で、特に農作物にとって深刻な問題を起こす可能性があります。この記事では、立枯病の基本情報、対処法、予防策を詳しく解説します。記事の最後では、立枯病に有効な薬剤も紹介しますので、被害にお悩みの方は立枯病の対処にお役立てください。
立枯病(タチガレビョウ)とは
立枯病は、植物の根や茎が枯れ、最終的には植物全体が枯れて死んでしまう病気です。病原体は主に土壌中の菌類や細菌によって引き起こされます。
植物が立枯病にかかると、初めは生育不良気味になります。病状が進行するにつれ葉が枯れ、最後は株全体が立ち枯れしてしまいます。
育てている植物や野菜の育ちが悪いなと感じたら立枯病にかかった可能性があるかもしれません。
立枯病の症状
立枯病に感染すると、植物の茎の基部が褐色に変色し、徐々に枯れていきます。初期段階では葉が黄色に変色したりしおれが見られることもあります。
最終的には植物を植えている地面が褐色に変わります。花壇に植えた植物が立枯病になると、円状に被害が広がります。
立枯病が発生しやすい時期
湿度が高く、気温が温暖な時期は立枯病発生しやすい季節です。気温が上がり始める4月から5月頃から警戒が必要で、11月頃まで発生リスクが続きます。
特に雨の多い季節や、土の水はけが悪い状態が続くと発生しやすくなります。
植物を植えるときに、深くまで植えすぎるのは注意。茎や種が土の中に埋まったときに湿度が上昇し、立枯病発生源となりやすいからです。
立枯病の原因
立枯病は、土の中の病原菌が植物の根から侵入し、茎の組織を破壊することで発症します。土壌の病原菌は糸状菌と言い、カビの一種です。
病原菌は暖かい時期になると茎や根に浸食します。高温多湿の時期になるとさらに病原菌が生育しやすくなるため注意が必要です。
立枯病を引き起こす病原菌は、植物や野菜の収穫後にも土の中に残り、冬を越す場合があります。越冬した病原菌は春になると再び繁殖しはじめます。
立枯病に感染した土で採れた植物や野菜の種には病原菌付着のリスクがあります。その種を土に撒いて育てると菌が土の中で繁殖するため、立枯病が再発してしまうかもしれません。
立枯病になりやすい植物はある?
立枯病は特に野菜や穀物などの農作物に多く発生しますが、花や庭木などの観賞用植物にも影響を及ぼします。トマト、ナス、イネなどが特に感染しやすいとされています。
また、ハーブ類やサツマイモなどの根菜類、コスモス・ヒマワリ・ケイトウなどの草花も立枯病になりやすいといわれます。
植物が立枯病になったときの対処法
育てている植物や野菜などが立枯病にかかってしまった場合、どのように対処したら良いか見ていきましょう。
初期段階は発病した株だけ抜き取る
病気の初期段階で発見した場合、感染した株と周りの土を速やかに取り除くことが大切です。初期段階で対処できれば、菜園や畑、花壇全体に被害が広がるのを防げます。
立枯病にかかった株は残念ながら元に戻ることはないため、すぐに処分するようにしましょう。焼却処分がおすすめです。
畑や株全体にまん延したら薬剤で対処
病気が広がってしまったら、薬剤を使用して治療する必要があります。畑の場合は作物の植え付け前に土壌消毒を行います。
家庭菜園の場合はいろいろな植物を植えてある可能性が高いため、土壌消毒は難しい方法かもしれません。
家で野菜や植物を育てていて立枯病が心配なときは、同じ土に同じ野菜や同じ科に属する野菜を続けて植え付ける、連作を避けることで立枯病の発生を抑えられる可能性があります。
立枯病に有効な薬剤・治療法
立枯病の発生に効果を発揮する薬剤や治療法をご紹介します。
ダコニール1000
野菜・草花・果物など、さまざまな植物に広範囲に効果を発揮する殺菌剤です。糸状菌によって起こる、立枯病を代表に炭そ病や斑点病など、葉の色が変わるタイプの病気に効果が期待できます。
ダコニール1000は、耐光性や耐雨性、さらには残効性もあるため、薬剤を撒いた後に雨が降ったり、日が強く当たったりした場所でも効果が続きます。
薬剤は水でうすめて使います。希釈倍数は植物の種類によって8倍から2,000倍まであるため、使用方法をよく見てから使うようにしましょう。
使用できる作物:草花・観葉植物・花木・庭木・野菜・果物・芝生
サンケイオーソサイド水和剤80
カビ菌に対して高い効果を持つ殺菌剤です。庭の芝生に発生する病気にも効果を発揮します。
この薬剤は、立枯病の被害以外にも球根や種の消毒に使用可能です。庭木や花、野菜類にも使え、植物への薬害が少ないのも特徴です。
薬剤の散布の際は水にうすめて使いましょう。
使用できる作物:草花・観葉植物・花木・庭木・野菜・果物・芝生
土作りの際にカニ殻粉末を混ぜる
薬剤の散布に不安がある場合は、土づくりの際にカニ殻の粉末を混ぜる方法を試してみましょう。
カニ殻の粉末は、土壌の改良剤として病原菌の増殖を抑える効果が期待できます。カニ殻には、キチン質という物質が豊富に含まれており、病害菌を抑制する放線菌を増やしてくれるのです。
カニ殻肥料粉末はネットショップで購入できます。
木酢液散布
木酢液は自然農法において用いられることが多く、病害予防に効果的です。木酢液散布は、立枯病の元になる糸状菌の抑制について研究が行われ、効果が期待できることが確認されています。
薬剤の散布よりは効果が低いかもしれませんが、家庭菜園やプランター栽培の場合は木酢液散布を試してみるのも良いでしょう。
太陽光消毒と熱消毒
土壌を太陽光や熱で消毒し、立枯病の病原菌を減少させる予防方法です。これは再発予防にも効果が期待できます。
立枯病を予防するためには土の状態を見直すことが重要です。太陽光消毒や熱消毒をすることで原因菌が死滅し発生を未然に防ぐことができます。
プランター栽培や家庭菜園の場合は、使用する土をシートや新聞紙などに広げて、太陽光がまんべんなく土に当たるようにします。ときどき土を返すようにするのもおすすめです。
土の消毒のほかには、以下の予防策も試してみましょう。
- 有機質分の少ない清潔な土を使用する
- 用土は空気を含ませながら混ぜるようにする
- 植え付け前に土を水浸しにしない
- 植え付け後は植物の状態を見ながら水やりをする
- 間引きするなど、植物同士が混みあわないようにする
- 同じ種類の作物を連作しない
立枯病の病原菌は高温多湿を好みます。土が暖かく、湿気が多いほど菌が繁殖するため、できるかぎりの予防をして作物を立枯病から守りましょう。
立枯病の発生原因を知って対処しよう
立枯病の発生を予防するには、適切な土の管理と栽培方法が重要です。
立枯病は多くの作物に影響を及ぼすため、事前に立枯病の知識を蓄えておくことがおすすめです。病気の早期発見と迅速な対応は、健康な植物を育てるためには不可欠。
この記事を参考に、立枯病のリスクを最小限に抑えましょう。