ナデシコは古来から日本に自生する花です。大和撫子という言葉や秋の七草としても良く知られています。可憐に咲く花が美しく、自宅で育ててみたいという方も多いでしょう。こちらの記事では、ナデシコ(ダイアンサス)の育て方と、適切なお世話の方法をご紹介します。
ナデシコは日本女性の例えにも使われる可憐な花
ナデシコはナデシコ科ナデシコ(ダイアンサス)属の常緑多年草で、秋の七草「カワラナデシコ」をはじめ、4種が日本に自生しています。さらにヨーロッパや中国、北米などが原産のナデシコもあり、種間交配でたくさんの園芸品種が育成されています。
花言葉は「大胆」や「純愛」で、奥ゆかしく内に秘めた強さを持つ日本女性を「大和撫子」と例えるほど、古くから私たちの身近で育てられてきた花です。
ナデシコは鉢植えや切り花として楽しめるほか、品種によっては四季咲き性のものもあるので、年間を通してガーデンを可憐に彩ってくれるのが魅力です。
ナデシコの代表品種
ナデシコは品種によって草丈や株の広がり方、性質の違いがあります。ナデシコの代表的な品種を7つご紹介します。
カワラナデシコ
日本各地に自生する秋の七草のひとつで、花びらには深い切れ込みがあり、先が細かく裂けて細くなった形状が特徴です。
ヒゲナデシコ
ヨーロッパ原産の品種で、茎の先に多数の小花を咲かせます。本来は宿根草ですが、暑さに弱いため一年草として扱われています。
タツタナデシコ
ヨーロッパ原産の品種で、蛇の目模様の花や銀白色の葉が特徴です。「スイートネス」という園芸品種はバニラのような甘い香りがします。
ヒメナデシコ
ヨーロッパ原産で、小さく繊細な草姿が特徴です。地面を覆うように広がるので、小道やロックガーデンのグランドカバーとしても人気があります。
セキチク
別名「唐撫子(カラナデシコ )」とも呼ばれる中国原産のナデシコです。葉の形が竹に似ていることから石竹(セキチク)という名前が付けられたといわれています。
フォトンシリーズ
カワラナデシコとヒゲナデシコの雑種で、丈夫な四季咲き性品種です。草丈は80cmほどで、花壇に植えたり切り花にしたりして楽しめます。
テルスター系
ヒゲナデシコとセキチクの雑種で、四季咲き性品種です。花径が2.5〜3cm、草丈が15〜20cmの小型のナデシコです。
ナデシコに必要な生育環境
ナデシコは、日当たりが良い場所を好むので、半日以上日光が当たる場所で育てます。ただし真夏の強すぎる日差しには弱いので、遮光するなどの工夫をすると良いでしょう。
また、水はけが良く風通しが良い場所での栽培が適しています。蒸れに弱いため、高温多湿の場所は避け株間を空けて植え付けます。
ナデシコは多年草の品種が多いですが、株が古くなると生育が衰えるので、数年ごとに挿し芽や種まきで株の更新が必要です。
適している用土
ナデシコは丈夫な性質で砂利まじりの場所や傾斜地、石垣の上などでも育ちますが、自宅で育てる場合は、市販の園芸用培養土に植え付けましょう。
ブレンドする場合は、赤玉土7に対して腐葉土3を混ぜたものを使用します。また、山砂や鹿沼土を加えると水はけが良くなるのでおすすめです。さらに、庭植え、鉢植えどちらの場合も少量の苦土石灰を混ぜておきましょう。
水やりの仕方
ナデシコは乾燥に強い性質ですが、生き生きと育てるため、また開花を促すためには十分な水分が必要です。鉢植えのナデシコは、用土が乾いたタイミングで葉や花にかからないようにたっぷりと水やりをします。
庭植えのナデシコは水やりは不要です。長い間雨が降らない場合は、様子を見て水やりをしましょう。乾燥すると下葉が枯れやすいので良く観察しておきましょう。
肥料のタイミング
真夏と真冬以外の4〜6月、9~10月に月1回の頻度で置き肥、または月3回の頻度で液体肥料を与えましょう。四季咲き性のナデシコには、肥料を与える回数をやや多めにすることで花付きが良くなります。
ナデシコの花が咲かない原因は?
「ナデシコの花がなかなか咲かない!」という場合は、以下の項目に当てはまっていないか確認してみましょう。
- 暖かい室内に置いている
- 肥料が足りていない
- 株が古くなった
ナデシコは寒さに強く、花を咲かせるためには寒さに当たることが必要です。暖かい室内で育てていると花が咲かないので、外で育てましょう。
また、肥料が足りなかったり、株が古くなると生育が衰えるため花付きが悪くなります。
ナデシコの夏越し冬越し
暑さに弱く寒さに強いナデシコは、夏と冬に適切なお世話をすることで丈夫に育ち、次の開花を促します。
夏前までには切り戻しを
暑さに弱いナデシコは、梅雨前に夏越しの準備をします。蒸れ防止のために切り戻しをして、秋の開花に備えます。
草丈の高いものは、花が終わった茎を株元近くでカットします。草丈の低いものは、開花が一段落したらまとめて半分くらいの位置で切り戻します。マット状に広がるタイプのナデシコは、特に切り戻しは必要ありません。
冬は霜対策を
寒さに強いナデシコは、冬でも戸外で育てます。ただし霜に当たると根が痛んでしまうため、鉢植えは軒下へ移動させ、地植えのナデシコにはマルチングをして対策しましょう。
ナデシコを育てるときに注意すべき病害虫
ナデシコを育てていて、花や葉、茎に白や茶の斑点が出たり、下葉が黄色く枯れたりしたら、灰色カビ病やサビ病にかかっている可能性があります。
患部を取り除き、それでも広がるようなら薬剤を散布します。それでも治らない場合は、他の株にも影響するので、根から取り除き株を処分しましょう。
また、アブラムシやハダニが発生することもあります。見つけ次第駆虫して、薬剤を散布します。
普段の花がら摘みや、夏前の切り戻しをして蒸れないように管理し病害虫の発生を防止しましょう。
鉢植えのナデシコは毎年植え替えを
ナデシコは細根がびっしりと生え、根の張りが良いため、鉢植えの場合は毎年植え替えましょう。春または秋になったら、根を解した苗をひと回り大きな鉢に新しい土を入れ植え替えます。
ナデシコの増やし方
ナデシコは多年草の品種が多いため何年にも渡って育てられます。しかし株が古くなってくると成長が衰え、花が咲かなくなってしまうため、数年ごとに株の更新が必要です。
ナデシコは、挿し芽、種まき、株分けで増やせますが、株の更新を目的とする場合は、挿し芽がおすすめです。
挿し芽
ナデシコは挿し芽で簡単に増えるので、株の更新や数を増やすのにおすすめの方法です。4〜6月または9〜10月に行います。
挿し芽の手順
- 花びらのついていない若い芽を、上から5〜10cmくらいのところでカットする。
- 下の方の葉は取り除き、30分以上水につけ吸水させる。
- 育苗用土を入れたポットに挿し、半日陰で乾燥しないように管理する。
- 根付いて新芽が出たら鉢に植え付ける。
種まき
種が実って採取できたら、春か秋に種をまくと芽が出ます。本州などの温暖地では9〜10月にまくのが一般的です。ただし、親と異なる花が咲くことが多いため、同じ花を咲かせたい場合は市販の種をまきましょう。
種をまく時のポイントは、種を土に深く埋めず2mmくらいの土を被せることです。半日陰で芽が出るまでは乾燥させないように注意しながら管理します。本葉が2枚出たらポットに植え付けましょう。
株分け
株分けに適している時期は9月中旬から下旬にかけてです、地際からの芽吹きが多く、株張りの良いものを選んで株分けしましょう。それぞれに芽が3つずつ付くように分け、株間を空けて植え付けます。
庭を可憐に彩るナデシコを育ててみよう!
ナデシコは可憐な花姿が美しく、庭植えや鉢植えで育てて切り花としても楽しめる花です。暑さや蒸れに弱いため、切り戻しや花がら摘みをしてお世話をしましょう。適切な肥料やりをすることで、花付きが良くなります。
たくさんの品種の中から、好みのナデシコを選んでお庭で育ててみてはいかがでしょうか?