初心者がキキョウを育てるときは、いくつかのポイントを押さえることで綺麗な花を長く楽しめます。地植えはもちろん、鉢植えやプランターを使ってベランダや玄関で育てることも可能です。この記事で、初心者向けのキキョウの育て方や注意点、よくあるQ&Aを見ていきましょう。
古くから日本で楽しまれてきた上品な花「キキョウ(桔梗)」
キキョウ(桔梗)は遠い昔から国内各地に咲く人気の花です。キキョウ科・キキョウ属に分類され、日本以外では東南アジアや中国に生育しています。
人気武将「明智光秀」の明智家の家紋にも採用されているなど、その美しい姿は時代を超えて愛されてきました。
キキョウは日本の気候に適しており、初心者でも簡単に育てられるのが魅力です。鉢植えやプランターでも咲くため、玄関やベランダを美しく飾りたい方にも向いています。
毎年、夏の間ずっと花を咲かせてくれる丈夫な植物
キキョウが花を咲かせる時期は、6~10月ごろです。
秋の七草に数えられていますが、初夏から夏の終わりにかけてもずっと美しい姿を観賞できます。開花時期が長く、育てがいのある花です。
また、キキョウは暑さに加えて寒さにも強く、一度植えれば何年にも渡って花を楽しめます。枯れにくさという意味でも、園芸初心者が挑戦する花に向いていますよ。
「永遠の愛」「気品」「清楚」など花言葉も素敵
そんなキキョウの花言葉は、「永遠の愛」「気品」「清楚」といったポジティブな内容です。「変わらぬ愛」なんて素敵な花言葉もあり、大切に育てていると幸運を運んできてくれるかもしれませんね。
キキョウは育てやすい花ですが、それでも水やりなどのいくつかのポイントを押さえておく必要はあります。早速、具体的な育て方を見ていきましょう。
【初心者】ゼロからできるキキョウの育て方
今回は園芸初心者がゼロからでも挑戦できるように、キキョウの育て方を解説します。
4月ごろに種まきに挑戦しよう
最初に行う作業は種まきです。キキョウは種から育てられる花で、4月上旬ごろに撒くと元気に育ちます。必要な道具と手順は以下の通りです。
- キキョウの種
- 種まき用として販売されている土
- 育苗ポット(例:セルトレイなど)
- ラップ
- 土の中央に軽く指で穴を空けて2~3粒ずつ種を入れ、薄く土をかけて種を隠す
- 土で種を隠した部分にラップを軽くかけて保温する
- 明るい日陰に置き、土が乾燥しないように霧吹きで水やりをする
- 発根した後は日当たりの良い場所に移す
- 生育の悪い苗を間引いていく(ひょろひょろと弱々しい苗などを取り除く)
- 本葉(最初に出た葉の次に出始める葉)が4枚ほどになったタイミングで、次項目の植え付けを行う
道具はいずれも園芸ショップや通販で簡単に手に入ります。なお、上記を難しく感じた方は、種ではなく苗をそのまま購入してくるのもおすすめです。
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「地植え」と「鉢植え・プランター」で育てられる
キキョウを植え付ける方法は大きく2つあり、「地植え」と「鉢植え・プランター」に分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
- 植木鉢などを使わず、庭の土にそのまま植える方法
- 水やりが不要なことも多いなど、育てるのが非常に簡単
- 室内へ一時的に避難させることができないため、大雨や台風などには弱い
- 鉢植えやプランターに土を用意し、キキョウを植え付ける方法
- 室内に入れて雨をしのいだり、気分で飾る場所を変えたりと自由度が高い
- 水やりや植え替えなどの世話の手間は地植えよりもかかる
どちらも一長一短あるため、好きな方を選んで大丈夫です。方向性として、手軽さを重視するなら地植えが、自由度の高さを重視するなら鉢植え・プランターが向いています。
キキョウの地植えの植え付け手順
キキョウを地植えにする場合の流れは以下の通りです。
- 日当たりが良い場所を探す
- 苗よりも一回り大きくなるように土に穴を掘る
- 穴に向かって、根を傷つけないように優しくキキョウを植え付ける
- たっぷりと水をやり、土の中で苗を固定すれば完了!
キキョウの地植えは3月もしくは10月に行えます。ただし、10月の場合はすぐに冬が来て地面から出ている部分は枯れてしまうため、3月の方が成長を楽しめます。
キキョウの鉢植え・プランターの植え付け手順
キキョウを鉢植え・プランターで育てたいときは、以下の道具と手順を用いて植え付けを行います。道具は園芸ショップや通販で入手しましょう。
- 5号サイズの鉢
- 鉢底ネット
- 鉢底石
- 水はけの良い土
- 遅効性の肥料(土に混ぜ込むタイプ)
- 新しい鉢に鉢底ネットを敷く
- ネットが隠れる程度に鉢底石を入れる
- 肥料を説明書の手順に従い、土と混ぜ合わせる
- 鉢の7割ほどまで土(&肥料)を入れる
- キキョウを現在の鉢から取り出し、優しく植え付ける
- 残りの土(&肥料)を入れた後、一度水やりをして土の中で苗を固定する
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風通しが良く日当たりの良い場所に置く
鉢植え・プランターへ植え付けたキキョウは、風通しも日当たりも良い場所に置きましょう。
キキョウは日光が大好きで、日の当たる場所に置くと美しい花を咲かせてくれます。
注意点として、夏場の強すぎる日差しに当てると、葉焼け(葉の細胞が日光で死ぬ現象)を起こすことがあります。キキョウの葉に異変が見られたときは、少しだけ日陰に移動させてあげてくださいね。
水やりはたっぷりと与えよう
キキョウは頑丈ですが、乾燥が嫌いな花です。
水やりは表面の土が乾いた段階で、鉢底から水があふれ出るほどたっぷりと与えます。夏のような乾燥しやすい時期には、朝・夕と2回確認してあげましょう。
地植えのキキョウの場合は、雨で十分に水を得られるため基本的には放置で構いません。あまりにも晴れの日が続き、土が乾燥してしまったときのみ水をあげてください。
小まめに肥料を与えると大きく育つ
キキョウは小まめに肥料を与えることで、大きく美しく育ちます。つぼみができたころからは2週間に1回ほどのペースで、市販の液体肥料を与えてあげましょう。
とはいえ、本来のキキョウは野生でも元気に育つ植物です。
必ず肥料をやらなければならないと心配する必要はありません。お楽しみの一環として、できる範囲で与えてみてくださいね。
キキョウを育てるときの注意点
では、キキョウを育てるときに知っておきたい注意点も見ていきましょう。キキョウは頑丈な花ですが、以下のポイントを押さえることでさらに元気に育ちます。
- 害虫
- 病気
- 剪定(摘心・切り戻し)
- 支柱
「アブラムシ」などの害虫に注意
最初に注意しておきたいのは害虫です。鉢植えのキキョウは「アブラムシ」や「ハダニ」が付き、繁殖してしまうことがあります。
このような害虫はキキョウの見た目を悪くするうえに、栄養失調や病気の原因になります。対策として、風通しの良い場所に置くことをもう一度気を付けてみてください。
地植えのキキョウの場合は、カメムシやナメクジといったより大きな害虫が湧くこともあります。
そのようなときは、『住友化学園芸』の “ベニカXネクストスプレー”のように「花にも使える害虫駆除スプレー」を利用するのがおすすめです。
「立枯病」などの病気対策も重要
害虫と同じく注意しておきたいのが病気です。キキョウは以下のような病気にかかることがあります。
- 立枯病:土が不衛生なときにかかりやすい病気。まずは根が弱り、やがては苗全体が弱る
- うどんこ病:うどん粉をまぶしたように葉や茎が白くなる病気。開花を邪魔することも
- 黒星病:葉に黒い星や円の模様ができ、キキョウの元気がなくなる病気。梅雨に多い
対策として、「風通しの良い場所に置くこと」と「植え替え時に新品の土を使うこと(庭の場合も植え替え時は周囲だけ土を入れ替える)」を意識しましょう。
花の咲き方を調節したいなら「剪定(摘心・切り戻し)」
キキョウは剪定(摘心・切り戻し)により、花の咲き方を調節できます。摘心・切り戻しの特徴と手順は以下の通りです。
【キキョウの剪定(摘心・切り戻し)の特徴と手順】
摘心 | 切り戻し | |
特徴 | (苗の)好きな場所に花を咲かせるために行う | 二番花(最初の花が枯れた後に咲く花)を楽しむために行う |
手順 | 花を咲かせたい茎の先端部分(葉のすぐ上)を剪定ばさみで切る | 一度花が咲き萎れてきた後、茎が半分~2/3ほどの長さになるよう剪定ばさみで切る |
そのほか、二番花が咲き始めた後は、終わった花から順番に花がら摘みをすると翌年も綺麗に咲きやすくなります。
花がら摘みのやり方は簡単で、花の根元から先(茎の先端より花側の部分)を剪定ばさみで切り取るのみです。
風が強い地域では支柱でサポートしてあげよう
風が強い地域に住んでおり、なおかつ地植えや室外で育てる場合には、支柱を立ててキキョウをサポートしてあげましょう。あまり風が強いとキキョウの茎が折れることがあります。
支柱は植え替えや植え付けのタイミングで市販のアイテム(特にあんどん支柱)を用意し、土に挿して優しく茎を絡ませてあげるだけで大丈夫です。
キキョウは1年に一度植え替えたい植物
そのほか、キキョウは1年に一度(地植えは3年に一度)は植え替えをしてあげたい花でもあります。生育が活発で放置するとあっという間に鉢が小さくなり、根腐れなどのトラブルが起きやすいためです。
キキョウの植え替えを行う時期や手順は、前述の植え付けと同様で大丈夫です。
キキョウは「直根性」という太い根を傷つけると弱りやすい性質を持つため、特に初心者は根をできるだけ触らないように気を付けてくださいね。
同時に「株分け」で数を増やすこともできる
ちなみに、キキョウは植え替えのタイミング(特に3月)で株分けをすると数を増やすこともできます。手順は以下の通りです。
- キキョウを増やしたい個数分、植え付けと同じ手順で新しい鉢の準備を整える
- 現在の鉢からキキョウを優しく取り出す
- 根側から手でほぐすようにして、キキョウを複数の苗に分割する(難しい場合はナイフで切る)
- ナイフで切った場合は切り口に癒合剤塗る
- 新しい鉢に植え付けて、一度水やりを行えば完了!
「挿し木(挿し芽)」で数を増やすのもおすすめ
株分けを難しいと感じる場合は、挿し木(挿し芽)を使ってより手軽に数を増やすこともできます。5月ごろに以下の手順で行いましょう。
- できるだけ元気な茎の先端から5cmほどを切り取る(挿し穂を切り取る)
- 挿し穂の切り口を1時間ほど水に漬ける
- 挿し穂を水に漬けている間に、新しい鉢(小さめのもの)の用意をしておく
- 新しい鉢の土に指で穴を空け、切り取った挿し穂の切り口側を指す
- 風通しの良い明るい日陰(例:レースのカーテン越しに陽が当たる場所)に置く
- 常に土が湿った状態になるように、小まめに水をやり続ける
挿し木後は大きな葉が出てきたころに、通常の鉢に植え付けてあげれば完了です。文字にすると難しそうにも見えるものの、実際に挑戦すると簡単に行えますよ。
キキョウの育て方に関するよくあるQ&A
最後に、キキョウの育て方でよくあるQ&Aを見ていきましょう。
冬越しはどうすれば良い?
キキョウの冬越しでは、基本的に何もしなくても大丈夫です。
キキョウは冬になると地上部分が枯れて土の中で年を越し、また翌年顔を出してくれます。園芸用語で「宿根草」と呼ばれる植物です。
念のため、地面が凍結したり大量の霜がつく可能性のある地域では、冬の間は表面に土をふんわりと覆い被せてあげても良いでしょう。とはいえ、キキョウはー10度まで耐えられるともいわれており、それほど心配する必要はありません。
長く綺麗な花を楽しむためには?
キキョウの花を長く綺麗に楽しむためには、前述の剪定と肥料が大切になります。
剪定によって二番花を咲かせることで、長期間、キキョウの可憐な姿を堪能できます。また花がら摘みによって、タネではなく花に栄養を集中させることも重要です。
タネはどうやって採取する?
キキョウのタネを採取したいときは、あえて花がら摘みや切り戻しをしないようにしましょう。そうすると、8~9月にかけて花の部分が熟して膨らみ、中にタネが生まれます。
膨らみを指で触り、完全に乾燥していると感じたころがタネの採取時期です。
膨らみを根元から剪定ばさみで切り取り、テーブルにティッシュを敷いた上など、散らばってしまわない場所で広げてみてください。
採れた種は冷蔵庫で種まきの時期まで保管しておきましょう。
キキョウは簡単に育てられる植物!庭やベランダで楽しもう
この記事ではキキョウの育て方について、花を長く楽しむために大切なポイントや注意点、よくあるQ&Aをご紹介しました。
キキョウは可憐な見た目とは裏腹に頑丈な花です。いくつかのポイントを押さえるだけで、ベランダや庭でも上手に咲かせることができます。
日当たりの良い場所に置く、小まめに水やりをして乾燥を防ぐなど、ご紹介した内容を参考にぜひ挑戦してみてくださいね。