秋の花木として人気の金木犀は、実はベランダや室内で「鉢植え」「プランター」で育てることができます。もちろん庭に地植えも可能で、育て方の自由度が高い植物です。この記事では金木犀の特徴と初心者でもできる鉢植えでの育て方、花を元気に咲かせる方法とよくあるQ&Aをご紹介します。
秋に咲く香りの良い花木「金木犀(キンモクセイ)」
金木犀(キンモクセイ)は秋になると町中で見かける、オレンジ色の花が美しい花木です。モクセイ科モクセイ属に分類され、中国を原産地としています。
金木犀の代名詞といえば、甘みのあるユニークな香りです。最近では「オスマンサス」という名称で香水界隈でも人気を集めています。
金木犀は街路樹として咲く大木のイメージも強いものの、意外にも家庭の鉢植え・プランターで育てることが可能です。
まずは、育てる前に知っておくとより楽しめる3つの豆知識を見ていきましょう。
実は食用としても楽しめる人気の植物
可憐な見た目と甘い香りが特徴の金木犀の花は、実は食べることができると知っていますか?
原産地である中国では、金木犀の花を乾燥させたお茶「桂花茶(けいかちゃ)」や、白ワインに花を漬け込んで作り上げる「桂花陳酒(けいかちんしゅ)」が人気です。
(※名前の「桂花」が金木犀のこと)
特に桂花陳酒は甘く気品のある味わいと美しい黄金の液色が素敵で、日本の飲食店でもときおり見かけます。
女性からの人気も高く、過去には世界三大美人のひとりとして数えられる「楊貴妃(ようきひ)」も好んで飲んでいたそうです。
「謙虚」や「気高い人」など花言葉も素敵
金木犀の花言葉は「謙虚」や「謙遜」、「気高い人」や「真実」といったポジティブな内容です。このうち謙虚や謙遜は、印象的な香りと裏腹に小さく可憐な花が咲く姿から付いたといわれています。
金木犀は風水の観点からも縁起が良く、特に南西(裏鬼門)で大切に育てると金運を上げてくれると考えられています。
園芸を通じて運気までアップさせたい方にもぴったりの花木です。
ちなみに:銀木犀(ギンモクセイ)との違いは?
ちなみに、金木犀と名前の似た植物に「銀木犀(ギンモクセイ)」があります。
金木犀と同じ秋(9〜10月ごろ)に花を咲かせますが、金木犀ほど特徴的な香りがないことから少し知名度では劣ります。両者の主な違いをまとめると、以下の通りです。
【金木犀と銀木犀の主な違い】
金木犀 | 銀木犀 | |
香り | 甘い独特の香りが辺りに広がる | 金木犀と似た香りだが、辺りにはほとんど香らない |
花 | オレンジ色。たくさんの花が密集して咲く | 白や黄色。金木犀より花数が少ない傾向 |
葉 | 銀木犀よりも幅が狭く、先端にギザギザがない | 金木犀よりも幅が広く、先端にギザギザがある |
金木犀と銀木犀は、香り・花・葉の3点の違いを意識することで見分けられます。
失敗しない金木犀(キンモクセイ)の育て方!鉢植えの手順も解説
ここからは、ゼロからできる金木犀の育て方をご紹介します。
金木犀は頑丈で、いくつかのポイントさえ押さえれば簡単に育てられる花木です。ぜひ気軽な気持ちで挑戦してみてくださいね。
まずは「鉢植え・プランター」か「地植え」か決めよう
金木犀を育てたいときに、最初に行うべき作業は植え方の選択です。
金木犀は大きく「鉢植え・プランター」か「地植え」かの2種類の方法で育てられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
【金木犀の植え方の特徴】
植え方 | 特徴 |
鉢植え・プランター | 植木鉢かプランターを用意し、金木犀を植え付ける方法。鉢(プランター)ごと場所を移動でき、室内にも入れられるため、トラブルに対処しやすい。 一方で、地植えよりも世話の手間はかかる。 |
地植え | 庭の地面や花壇に金木犀を直接植え付ける方法。環境やシーズンにもよるが、水やりをしなくても良いなど手入れが簡単。 一方で場所を移動できないため、台風などのトラブル時には対処が大変。 |
鉢植え・プランターと地植えは、自分の希望や利用できるスペースから好きな方を選んで大丈夫です。迷ってしまう場合は、以下も参考にしてみてください。
- 室内のインテリアとして金木犀を楽しみたい
- 自然災害や害虫被害のリスクが気になる
- できるだけ簡単な形で金木犀を育ててみたい
- 金木犀を大きな庭木に育てたいと憧れている
→鉢植え・プランター
→鉢植え・プランター
→地植え
→地植え
鉢植えなら「置き場所(庭・ベランダ・室内)」も選ぶ
鉢植え・プランターを選んだ場合は、置き場所も検討しておきましょう。庭・ベランダ・室内と、置き場所はそれぞれに違った魅力があります。
- 庭
- ベランダ
- 室内
移動のさせやすさを実現したうえで庭のガーデニングが可能。模様替えも何度でも楽しめる。
庭と室内の中間的な育て方。たっぷりと日差しを当てることができ、金木犀が元気に育ちやすい。
美しく香りも良いインテリアとして活躍。常に室内で育てることで、害虫被害のリスクを下げられるのも◎。
置き場所は後からでも変えられるため、「ここにしようかな?」と決めておく程度で大丈夫です。
必要な道具と苗を準備する
植え付け方と置き場所を決めた後は、必要な道具と金木犀の苗を準備しましょう。
- 金木犀の苗(高さ70~80cmほどのものが育てやすく◎)
- 水はけも水持ちも良い土(赤玉土7:腐葉土3の割合で混ぜて作るのが◎)
- 遅効性の肥料
- 割り箸などの細い棒
- スコップ(地植えの場合)
- 現在よりも一回り大きな植木鉢かプランター(鉢植え・プランターの場合)
- 鉢底石(鉢植え・プランターの場合)
- 鉢底ネット(鉢植え・プランターの場合)
- 支柱(自立できない苗を選ぶ場合)
道具や苗はいずれも園芸ショップや通販で簡単に手に入ります。
植え付けは春か秋がおすすめ
道具と苗の準備が終わった後は、いよいよ植え付けです。金木犀は3〜4月ごろの春か、あるいは9〜10月ごろの秋に植え付けると元気に育ちやすくなります。
鉢植え・プランター
鉢植え・プランターへの金木犀の植え付けは、以下の手順で行いましょう。
- 新しい鉢の底に鉢底ネットを敷く
- ネットが隠れる程度まで鉢底石を入れる
- 水はけも水持ちも良い土を7割ほどまで入れる
- 遅効性の肥料を入れる
- 現在の鉢から金木犀をそっと取り出し、新しい鉢に植え付ける
- 鉢の上から3cmほどの高さまで残りの土を入れる(必要なら支柱も立てる)
- 細い棒で土を優しくつつき、根と土を馴染ませる
- 一度たっぷりと水やりを行い、金木犀を鉢の中で固定してあげれば完了!
地植え
一方、地植えで金木犀を育てる場合はより手軽に植え付けられます。日当たりと風通しの良い場所を見つけて、以下の手順で作業を行いましょう。
- 金木犀を植える場所に、現在の鉢以上の深さ・広さの穴を掘る
- 肥料を混ぜた水はけも水持ちも良い土を、穴の半分程度まで入れる
- 現在の鉢から金木犀を優しく取り出し、根に付いている土を軽くほぐす
- 苗のはじまり(株元)が地面と水平になる高さで、植え付ける
- 残りの土を入れ、細い棒で優しくつついて根と土を馴染ませる
- 一度たっぷりと水やりを行い、金木犀を土の中で固定してあげれば完了!
文字にすると難しそうにも見えますが、実際に試してみると簡単です。植え付けが完了した後は、日々のお世話を進めていきます。
日当たりと風通しの良い場所で育てるのが◎
金木犀は日当たりと風通しの良さを好みます。そのため、鉢植え・プランターで育てる場合も、両方を意識して置き場所を選んであげられると◎です。
特に日当たりが悪いと、金木犀は花が付きにくくなったり葉が落ちたりしていまいます。可愛らしい姿を鑑賞するために気を付けておきましょう。
金木犀の鉢植えの水やりの仕方とは?
金木犀の水やりは植え方や季節から調節します。
鉢植え・プランターの金木犀は土の表面が乾くたびに水やりをします。水分が蒸発しにくい午前中の涼しい時間に、鉢底から勢い良く水が流れ出るほどたっぷりと与えましょう。
一方、地植えの金木犀は基本的に水やり不要です。夏場に快晴が続いたときなど、極端に水が不足したタイミングでのみ水をたっぷりと与えてください。
金木犀(キンモクセイ)の鉢植えの花を元気に咲かせるためのポイント
続いて、金木犀に花を元気に咲かせてもらうために、プラスアルファで気を付けておきたいポイントを見ていきましょう。
適量の肥料を与えてあげる
金木犀は適量の肥料を与えるとより元気に育ちやすくなります。
毎年、2〜3月ごろに有機肥料を用い、説明書記載の用法・用量を守って与えてあげましょう。このような冬に与える肥料のことは、園芸用語で「寒肥(かんごえ)」と言います。
楽天市場
Yahoo!ショッピング
害虫被害に気を付ける
金木犀は頑丈ですが、ときには害虫の被害に遭うこともあります。気を付けておきたい代表的な害虫は以下の通りです。
- ハダニ
- カイガラムシ
乾燥を好み、放置すると大量繁殖する害虫。汁を吸って葉を変色させる園芸の大敵
風通しの悪さを好み、こちらも大量繁殖する害虫。金木犀の苗から汁を吸うほか、甘い排泄物(蜜)がほかの害虫を呼ぶ原因にも
対策として、風通しの良い場所に金木犀を置いたうえで、ときおり「葉水(葉の両面に霧吹きで水を吹きかける手入れ)」をしてあげましょう。
ハダニとカイガラムシの両方を寄せ付けにくくなります。
病気の対策もしておく
害虫と同じく、病気の対策もしておけると安心です。金木犀が注意すべき病気は以下の通りです。
- 褐斑病
- 先葉枯病
葉に褐色や焦げ茶色の斑点ができる病気。カビが原因で、放置すると周りにうつる
葉の先端が淡い褐色などに変色する病気。菌類が原因で、こちらも放置するとうつる
どちらの病気も、日当たりと風通しの良い場所に置くことが対策となります。万が一、発症した場合には、異変の出た葉を速やかに取り除いてください。
慣れてきたら剪定にも挑戦してみよう
金木犀を育てることに慣れてきた方は、剪定も試してみましょう。金木犀は剪定を行うことで、樹形が綺麗に整い健康状態も良くなります。
金木犀の剪定は2〜3月、あるいは11月ごろに以下の手順で行います。
- 枝が混み合っている部分を探す
- 太い枝や交差している枝など邪魔だと感じる枝を選ぶ
- 剪定ばさみを使って、先端から2~3節ほどの場所でカットする
剪定ばさみは園芸用として売られている市販のもので大丈夫です。
注意点として、金木犀は春から夏に剪定をしてしまうと花が咲きにくくなるため、時期を守るように気を付けてくださいね。
金木犀の鉢植えは2年に1度は植え替えもしてあげよう
金木犀はグングンと成長する生育の旺盛な植物です。鉢植え・プランターで育てる場合は、2年に1度ほどのペースで植え替えをしてあげましょう。
植え替えをせずに放置すると、鉢の中に根が伸びるスペースがなくなり、やがては「根腐れ(根が酸欠で腐る現象)」を起こしてしまいます。
根腐れが起こると鉢から異臭がしたり、最悪の場合は金木犀が栄養・水分不足で枯れてしまうため注意が必要です。
ふさわしい時期は3~4月上旬
金木犀の植え替えは3〜4月上旬の春先に行います。この時期の金木犀は活動が活発で、植え替えの負担から素早く回復してくれます。
例外として、春先であっても気温が0度を下回るような寒い日は避けましょう。気温が低いと、金木犀がまだ本格的に目覚めていない可能性があります。
必要な道具と手順
金木犀の植え替えで必要な道具と手順は以下の通りです。作業は植え付け時とほとんど変わりませんが、不要な根をカットする手順を追加します。
- 水はけも水持ちも良い土(赤玉土7:腐葉土3の割合で混ぜて作るのが◎)
- 遅効性の肥料
- 割り箸などの細い棒
- 現在よりも一回り大きな植木鉢かプランター
- 鉢底石
- 鉢底ネット
- 植え付けと同様の手順で新しい鉢の準備をする
- 現在の鉢から金木犀をそっと取り出し、根を優しくほぐす
- 変色しているなど、異常のある根を剪定ばさみで取り除く
- 新しい鉢に植え付け、鉢の上から3cmほどの高さまで残りの土を入れる
- 細い棒で優しくつつき、根と土を馴染ませる
- 一度たっぷりと水やりを行い、金木犀を鉢の中で固定してあげれば完了!
金木犀(キンモクセイ)の育て方でよくあるQ&A
最後に、金木犀の育て方に関するQ&Aを見ていきましょう。
葉が落ちるのはどうして?
金木犀は常緑樹であり、本来は葉が落ちることはありません。
それでも葉が落ちる場合は、確率の高い原因として日照不足が疑われます。金木犀の置き場所を日当たりの良いスペースに変えてあげてください。
また、金木犀の置き場所を頻繁に変えていると、その負担で葉が落ちてしまうケースもあります。金木犀が驚かないように、あまり小まめに移動させないように気を付けてくださいね。
数を増やしたいときはどうすれば良い?
金木犀の数を増やしたいときは「挿し木」に挑戦するのが◎です。
挿し木とは現在の金木犀の枝を切り取って、新しい苗として育てる方法です。もちろん、枝を切り取られた側の金木犀もそのまま育つため、数を増やせます。
金木犀の挿し木はそれほど難しくなく、6〜7月に以下の手順で行います。
- 今年伸びたなど、新しく健康そうな枝を先端から15cmほどで切り取る
- 切り口を斜めに切り、3時間ほど水に漬ける
- 市販の挿し木用の土と鉢に優しく植え付ける
- 水を切らさないように育て、大きくなった後は通常の植え付けを行う
ポイントは新しい苗としての成長が始まるまで、できるだけ水を切らさないことです。途中で乾燥させてしまうと挿し木は失敗しやすくなります。
種まきから育てることはできる?
金木犀は日本では雄株しか流通していないといわれており、新鮮な種は手に入りません。
そのため、残念ながら日本では種まきから育てるのは難しいのが実情です。お気に入りの苗を手に入れる形で育て始めましょう。
育て方を知って金木犀(キンモクセイ)を好きな場所で楽しもう!
この記事では金木犀について、特徴や育て方、元気に咲かせるためのポイント、よくあるQ&Aをご紹介しました。
道路で見かける大きな木のイメージも強い金木犀ですが、育て方を知ることで鉢植え・プランターでも楽しめます。
ベランダのシンボルツリーにしたり、良い香りのするインテリアにしたり、活躍シーンはさまざまです。ご紹介した内容を参考に、ぜひ好きな場所で金木犀を育ててみてくださいね。