カルパッチョなどに添えられているディル(別名:イノンド)は、独特な香りと繊細な葉が魅力的なハーブです。鑑賞用としてだけでなく料理の風味付けとしても万能なディルを、ぜひ自宅で育ててみませんか?この記事では、初心者でも失敗しないディルの育て方のポイントと、収穫のコツをご紹介します。
ディルは爽やかな香りをプラスする「魚のハーブ」
ディルは地中海地方から西アジア地域原産のセリ科の植物です。サーモンカルパッチョなどに添えられているのを見たことがある人も多いでしょう。ディルは「魚のハーブ」と言われるほど、魚料理にマッチする風味豊かなハーブなのです。
ディルの葉は、魚料理以外にも肉や卵料理にプラスしたり、マリネやカルパッチョに添えたり、カレーやスープのスパイスとしても使われます。爽やかな香りと独特の風味の葉や茎は、ドレッシングやマヨネーズにしてもマッチしますよ。
また、種はディルシードとして販売されていてピクルスと相性抜群です。6月ごろに咲く花も、オイル漬けにして料理に添えられます。余すことなく使えるディルを自宅で育てて活用すると、料理の質がぐんとアップするでしょう。
ディルの花言葉と効能
ディルの花言葉は「知恵」です。繊細なレースのような葉は確かに知的な印象ですね。
ディルにはカルボンやリモネンなどの薬効成分が多く含まれているので、鎮静とリラックス効果があります。また、消化促進、利尿効果、母乳分泌を促す効果も期待できます。
また、種子にはカルシウムやミネラルなどの栄養素が含まれているので、料理にプラスして積極的に取り入れてみましょう。
ディルに必要な生育環境
ディルは育てやすいハーブで、ベランダなどの狭いスペースでも栽培できます。基本的には日当たりと風通しの良い場所で育てましょう。
寒さに強い反面、夏の厳しい暑さには弱いので半日陰で管理します。夏が終わる頃に種をつけ枯れてしまう一年草です。
用土は、水はけがあり水保ちも良い土が必要です。市販のハーブ用培養土か、赤玉土小粒7に対し腐葉土3の割合で配合した用土を使います。
地植えにする場合は、植え付けの2週間ほど前に苦土石灰を混ぜておきます。その後腐葉土を混ぜ、水はけの良い土作りをしてから植えましょう。
植え付けのコツ
ディルの植え付けに適した時期は、4〜6月または9〜10月です。苗を選ぶ際は、葉の色が生き生きとした緑色のものを選びましょう。
移植を嫌う性質があるので、地植えの場合はきちんと場所を考えてから植えます。数株植える場合は、株間を20cm以上開けて植え付けます。また、鉢植えやプランターの場合の植え替えは必要ありません。
ディルは太い根が真っ直ぐ垂直に伸びる直根性の植物です。この根が傷つくと枯れてしまうため、根を痛めないよう、土はほぐさずに丁寧に植え付けましょう。
水やりのコツ
ディルの水やりは比較的控えめにします。地植えの場合は水やりは必要ありません。
鉢植えやプランターの場合は、表面の土が乾いたらたっぷりと水やりをします。乾燥気味に育てますが、完全に乾燥してしまうと枯れてしまうので気をつけましょう。
肥料の与え方
ディルは植え付け時に、元肥として緩効性の化成肥料を混ぜておきます。さらに、たくさん収穫するためには、真夏以外に定期的な追肥をすると良いでしょう。月に1,2回ほど液体肥料を与えます。
ディルの収穫のコツ
ディルの収穫時期は3〜7月です。草丈が20〜30cmになったら、外側の葉から順に収穫しましょう。全体の3分の1までを目安に収穫します。
6月頃には黄色の花を咲かせます。花は切り花として楽しんだりピクルスに添えたりと活用できますが、種子ができると葉が硬くなり枯れてしまいます。たくさんの葉を収穫したい場合は、なるべく花を咲かせないようにしましょう。
剪定と摘心で収穫量アップ
ディルは剪定と摘心をすることで、よりたくさんの葉を収穫できるようになります。
草丈が20cmほどに生長したら、適度に切り戻しをします。収穫も兼ねて適度に剪定することで、風通しが良くなり草丈の伸びが促されます。
また、新芽の先を詰む摘心をすると脇芽が増えます。バランスを見ながら積極的な摘心をして、収穫量をアップさせましょう。
1mほどになったら支柱を
たくさんの葉が収穫できる頃には、生長が旺盛になり草丈が1mほどになります。茎が細く風で倒れやすいので、草丈が伸びてきたら支柱を立てて対策をすると良いでしょう。
ディルが注意すべき病害虫
ディルは病害虫に強いので心配することはほとんどありません。ただし、キアゲハが卵を生むとその幼虫があっという間に葉を食べ尽くしてしまいます。春と秋に発生するので、日頃からよく観察しておき、卵や幼虫を見つけたら取り除きましょう。
フェンネルとの見分け方&注意点
ディルと見た目がよく似たセリ科のハーブにフェンネルがあります。交雑すると香りや質が損なわれるので一緒に育てないように注意しましょう。
ディルは一年草なのに対し、フェンネルは多年草です。見分け方は、ディルの方が葉の密集度が高いところですが、よく見比べないと難しいので、購入の際はきちんとプランツタグを確認するようにしましょう。
ディルは種まきで増やせる
ディルはこぼれ種でも発芽するほど繁殖力が高い植物です。増やしたい場合は種まきに挑戦してみましょう。
種を集める方法は、花穂を茎ごと刈り取り、逆さに吊るしておきます。そうすることで追熟が促されて種が落ちてくるので、収穫した種を集め、種まきの時期まで冷暗所で保存しておきます。
種まきの手順
種まきに適している時期は4〜6月か9〜10月です。夏には枯れてしまうため、収穫時期が長くなる秋植えの方がおすすめです。8号くらいの鉢植えか45~60cmのプランターを使うと良いでしょう。
- 鉢底ネットと鉢底石、用土を入れる
- 30cmの間隔を開け1cmくらいの穴を作る
- ディルの種を3、4粒ずつ入れる
- ごく薄く土をかける
- 土を手で軽く押さえてから種が流れないようそっと水やりをする
- 発芽までは土が乾かないように管理する
ディルの冬越し
ディルは寒さに強いため、関東以西の平野部ではそのまま冬越しができます。寒さの厳しい場所では、ワラを敷いたり不織布をかけてたりして防寒対策をしましょう。
ディルでハーブビネガー作り
ディルは、料理にそのまま添えるだけでも上品な香り付けをしてくれますが、たくさん収穫できたらぜひハーブビネガーを作ってみてはいかがでしょうか?ドレッシングや風味付けとして、便利に使えますよ。
アップルビネガーや白ワインビネガーなどお好みの酢を使ってオリジナルのハーブビネガーを作ってみましょう。
- 収穫したディルは軽く洗って水気をよく拭いておく
- 煮沸消毒した瓶(200mlほどがおすすめ)にディルと酢を入れる
- 日の当たらないところで保管し、1日1回瓶をゆする
- 1週間経ったら中のディルは取り出して完成
ディルを育ててハーブのある暮らしを楽しもう
葉や茎、種や花など全部が料理に使えるディルは、育てやすいハーブなので初心者にもおすすめの植物です。
日当たりと風通しの良い場所で育てて、適切な水やりで管理しましょう。伸びてきたらどんどん収穫や摘心をすることで、脇芽が伸びて収穫量がアップします。
上品な香りで素材の味を引き立ててくれる万能なディルを育てて、料理をワンランクアップさせてみませんか?清涼感のある繊細な見た目は、鑑賞用としても癒しをもたらしてくれるでしょう。
ぜひディルをご自宅で育てて、ハーブのある暮らしを楽しんでみてください。