可憐な花が美しく夏の風物詩ともいえる朝顔は、歴史もあり日本人に馴染みの深い植物です。小学校の頃、勉強の一環で育てることも多く、初心者でも栽培しやすいのが魅力です。今回は朝顔の種の撒き方や育て方、もしものときのトラブルについてなどを解説します。
朝顔の基本情報を知ろう
清涼感があり夏の花というイメージが強い朝顔は、日本の長い歴史の中で、古くから愛されてきました。小学生の授業などにも取り入れられているので、初めて栽培した植物という方も多いでしょう。
そんな身近な朝顔ですが、どんな植物なのか詳しく知っていますか?まずは朝顔の基本情報を確認しておきましょう。
奈良時代に中国から渡来した一年草
朝顔はツル性の一年草で、どんどんとツルを伸ばし周りのものに絡まっていくのが特徴です。たくさんの葉を茂らせながら、時期が来れば見ごたえのある大きな花を咲かせるので、育てがいを感じられるでしょう。
そんな朝顔は、奈良時代末期~平安時代に中国から日本へ伝わったとされています。
そのときは薬草として使用されていましたが、品種改良が盛んに行われ、江戸時代には観賞用として空前の朝顔ブームが巻き起こりました。
現在でも朝顔は日本人の心を和ませる花として、朝顔の開花時期に合わせた6~7月には、全国各地で朝顔の品評会やお祭りなどが開かれています。
種類が豊富で育てやすさが魅力
朝顔は成長スピードが速く、ツルをぐんぐん伸ばし、葉をたくさんつけることから、育てている楽しみが実感しやすいでしょう。
種からでも苗からでも、さらに品種によっても、育て方の違いはほとんどないので、初心者でも育てやすいのが魅力です。すぐに花を楽しむことができ、植物の生態を知るのにもぴったりでしょう。
また、朝顔は品種改良が活発に行われてきたので、その種類も豊富です。青や赤などのはっきりとした色の花もあれば、淡い色や班が入ったものなどさまざま。黄色と黒以外の色は、ほとんどあるとされています。
見た目だけでなく、花が咲く時期が異なるものや、多年草のものもあるので、自分の好みの朝顔を探してみてください。
朝顔の花言葉
朝顔の花言葉は、ツルが支柱に絡みつきながら伸びていく姿から、「愛情」「結束」「愛情の絆」などがあります。
基本的にはポジティブなイメージの花言葉が多いですが、中には「私はあなたに絡みつく」という少し怖い花言葉もあるようです。
また、朝顔は花別にも花言葉があり代表的なのは、次のようなものです。
- 白色の朝顔の花言葉
- ピンク色の朝顔の花言葉
- 赤色の朝顔の花言葉
- 青色の朝顔の花言葉
「溢れる喜び」「固い絆」
「安らぎに満ち足りた気分」
「はかない情熱的な愛」
「短い愛」「はかない恋」
紫色の朝顔の花言葉
「平常」「冷静」
朝顔の育て方は簡単!正しい栽培方法で花を咲かせてみよう
それでは実際に、朝顔の育て方を見てみましょう。
朝顔は基本的には一年草の、はかない植物です。精一杯大きく育て、大輪の花を咲かせてその年を存分に楽しみましょう。
朝顔を育てるときに準備したいもの
朝顔は鉢やプランターなどで育てても良いですし、庭に地植えでも問題ありません。育てやすい場所に合わせて、次のアイテムを用意しましょう。
- 朝顔の苗または種
- 朝顔用の土、肥料
- 支柱
- 鉢植えの場合は6号(直径18センチ程度)以上の鉢やプランター
- 鉢底ネット
- 鉢底石
- 水やり用のジョウロなど
朝顔に適した土作り
朝顔はそこまで神経質に土選びをする必要はなく、ホームセンターなどで売っている水はけの良い培養土をそのまま使用して大丈夫です。
自分でブレンドして作る場合は、赤玉土と腐葉土を6:4の割合にするか、赤玉土、腐葉土、堆肥を6:2:2の割合で混ぜるようにしましょう。
また、朝顔は酸性土を好みません。庭の土が酸性に偏っている場合などは、苦土石灰を施すなどして土の酸度を中和させてください。
苗から育てる場合のポイント
あらかじめ芽が出ている苗からなら、植え替えるだけで簡単に栽培が始められます。苗の選び方や、植え付け方法をチェックしてみましょう。
苗の選び方
まずその苗が、どんな花を咲かせるのかがわかると、好みに合わせやすいのでおすすめです。開花イメージの写真が付いているものなどが、わかりやすいでしょう。
次に、苗の良し悪しをチェックしていきます。
茎がヒョロヒョロとしていないしっかりとしたもので、葉がきれいな緑色のものが元気な証拠です。
変色があったり、虫食いがあったりするものは避けましょう。また、持ったときにぐらつく場合、根がしっかりと張れていないことがあるので注意してください。
植え付け方法
- 鉢底に、鉢底ネットを敷いて鉢底石をネットが見えなくなるまで入れる。
- 鉢底石の上に培養土を、鉢の縁下2~3cm程度まで入れる。
- 苗が入るよう植穴を開ける。
- 苗の根鉢が崩れないように注意しながら、穴に植え付け、土を同じ高さにならす。
- たっぷりと水やりをして完了。
種から育てる場合のポイント
朝顔は、種からでも簡単に育てることが可能です。植え付ける前に下準備が必要な場合があるので、その方法をチェックしてみましょう。
種の芽切りをすると発芽率UP
朝顔の種は皮が硬いので、そのまま植えても発芽しないケースがあります。発芽率を上げるために、芽切りをしましょう。
芽切りとは種の表面を少し傷つける作業で、水分の吸収が良くなります。
朝顔の種にはへそと呼ばれる部分があるので、そこを紙やすりなどで白くなるまで擦りましょう。これだけで芽切り完了です。
最近では、すでに芽切りして販売されている種もあり、その場合は「発芽処理済み」などの記載があるので確認してください。
種まきの方法
- 鉢底に、鉢底ネットを敷いて鉢底石をネットが見えなくなるまで入れる。
- 鉢底石の上に培養土を、鉢の縁下2~3cm程度まで入れる。
- 種が入るよう1.5cm程度の穴を開ける。
- 芽切りした部分が上にくるようにして、種を穴に入れ土をかぶせる。
- たっぷりと水やりをして完了。
育てる場所の環境作り
植え付けが完了したら、育てる場所の環境を整えましょう。
置き場所について
朝顔は日当たりの良い場所を好むので、朝からお昼頃まで日光の入る場所で育てましょう。
午後以降の強い西日は苦手としているので、動かせる場合は日陰に移動させてください。
また、朝顔は暗闇の時間がないと花のつきが悪くなるので、夜は部屋の明かりなどが入らない場所に置くか、布をかけるなど対処しましょう。
風通しの良い場所なら多湿を避けられ、病害虫予防になります。
温度管理について
朝顔は耐暑性に優れていて、基本的には20℃以上の温度が必要です。発芽するのも20~25℃程度と言われ、6月以降の気温ならほとんど問題ないでしょう。
耐寒性はないので、霜に当たると枯れてしまいます。昼と夜の寒暖差が広い地域などでは、夜間の温度に気をつけてください。
水やり方法
朝顔は水をたっぷり必要とする植物です。夏に育てるということもあり、水の蒸発が早いので、朝と夕方1日2回の水やりが推奨されています。
日中は水の温度が上がって、根を傷めてしまう原因にもなるので、水やりは涼しい時間帯に行いましょう。
肥料について
朝顔の花をたくさん咲かせ長く楽しみたいなら、適切に肥料を与えましょう。
植え付けをしてから本葉が増えだしたころ、速効性肥料を追肥してください。液体肥料の場合は1週間~10日に1回、固形肥料の場合は1ヶ月に1回程度が目安です。
注意したいのは、花が咲く7月頃にはいったん肥料をストップさせてください。
花が咲いているときにも肥料を与えていると、栄養が豊富すぎることから株が子孫を残す努力を怠り、花が咲きにくくなります。
また、肥料の与えすぎは肥料やけを起こし、最悪の場合枯れることもあるので、適量を守りましょう。
朝顔を美しく仕立てる方法
朝顔が育ってきたら、仕立て方で楽しんでみましょう。どんな仕立て方をするかで朝顔の表情が変わるので、ちょっと大人の楽しみ方ともいえます。
朝顔の仕立て方は、大きく分けると数咲き作り、切込み作り、行灯作りの3種類なので、それぞれの仕立て方を見てみましょう。
数咲き作り
数咲き作りとは、5輪以上の花を同時に咲かせる仕立て方です。華やかな見た目が印象的でしょう。
- 本葉が増えてきたら6枚目までを残して残りは摘芯し、3~5枚目の葉から出た子ヅルのみを伸ばす。
- 子ヅルが10cm程度まで伸びたら、格子ヅルの葉の2枚目と3枚目で摘芯する。
- さらに子ヅルから孫ヅルが成長して蕾をつけたら、蕾を2、3個残して孫ヅルの先端を切る。
- 支柱などを使い、ツルが放射線状になるよう固定させ、花が咲けば完成。
切込み作り
茎の配置や花を美しく見せたいときは、切込み作りがおすすめです。
子ヅルを3本に仕立て、洗練された印象になるでしょう。
- 本葉を9枚になるまで育て、9枚目を手で摘み取る。
- 翌日以降、本葉の6枚目以降を摘芯し、さらに双葉や1枚目と2枚目の子ヅルを摘み取る。
- 3~5枚目から子ヅルが成長したら、格子ヅルの1枚目の葉についた蕾は摘み取り、4枚目以降は摘芯する。
- 2枚目と3枚目の葉についた蕾を育てて完成。
行灯作り
行灯作りは3本の支柱に巻きつけていく仕立て方で、子ヅル仕立てと呼ばれるものが一般的です。
風流な見た目になるので、朝顔らしさが出ます。
- 本葉が9~10枚になったらツル先を摘み取り、本葉の6枚目までを残して摘芯する。
- 双葉や1枚目、2枚目の子ヅルを摘み取り、3~5枚目から出た子ヅルのみを成長させ、10cmくらいまで伸ばす。
- 子ヅルの中から太くて蕾のつきが良いものを1本選び、それ以外を摘み取る。
- ツルが30cm程度まで伸びたら、支柱を3本立てて針金などで3段の輪を作る。
- 1段目の輪にツルを2/3ほど巻きつけ、2段目の輪に這わせる。さらに同じように3段目まで這わせていけば完成。
鉢植えの場合は大きさに合わせて植え替えするのがおすすめ
朝顔を鉢植えにした場合、大きさに合わせて植え替えが必要な場合もあります。
最初から6号以上の鉢なら植え替え無しでも大丈夫ですが、それ以下の大きさの鉢だった場合は大きな鉢に植え替えましょう。
小さな鉢で育てていると根詰まりを起こしたり、思ったように成長させられなかったりします。
植え替えたら支柱を立ててツルの行き場所を作り、水をたっぷりと与えましょう。
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朝顔を育てているときの注意点やトラブル対処法
朝顔を育てていると、思いがけないトラブルが起こることもあるでしょう。
もしものときに慌てないよう、よくあるトラブルや、注意点をご紹介します。
花が咲いたら摘み取ることでより多くの花が楽しめる
朝顔は7月中旬くらいから、9月頃まで花を咲かせます。一日花なので、朝咲いた花は夕方には枯れ、また次の日も同じように繰り返していきます。
この枯れた花をそのままにしておくと、種を付けてしまうため、新しい花が咲きません。
1日の終わりに咲き終わった花を摘み取ることで、多くの花を咲かせることができます。
摘芯することで脇芽の生長を促せる
特に仕立てようと思っていなくても、脇芽の成長のために摘芯を行うのがおすすめです。
6月中旬以降に、ツルを50cm程度で摘芯することで、新しいツルの発育を促せられます。
さらにツル多く茂らせたり、花を大量に咲かせたりすることが可能です。
花が咲かない理由は?
せっかく育てた朝顔が、開花の時期になっても花を咲かせないということがあります。
まず確認したいのは、朝顔の種類です。“西洋朝顔”だった場合、開花時期は9月以降なので、夏には花を咲かせません。
西洋朝顔ではないのに花が咲かないのは、夜に照明を当てている時間が長かったか、肥料過多だった場合が考えられます。
特に窒素系の肥料は葉やツルを茂らせてしまい、花付きが悪くなるので注意しましょう。花を多く咲かせたい場合は、リン酸系の肥料を選んでみてください。
葉が変色する理由は?
朝顔の葉は変色して、美しい緑が失われてしまうことがあります。考えられる原因は、肥料が足りないか、根が目詰まりを起こしているかです。
肥料が足りないと赤っぽく変色して成長が止まるので、追肥をして様子を観察してみましょう。
根詰まりが原因で葉が弱った場合は、大きな鉢に植え替えを行ってください。
気をつけたい病害虫
朝顔は丈夫なので、基本的には病害虫の心配はあまりありません。
ただ、アブラムシやオンシツコナジラミ、ヨトウムシなどがつくこともあります。乾燥しているとハダニも心配です。
もしも害虫が付いたら、繁殖する前に専用の薬剤を撒くなどして対処しましょう。また、適度な湿度と温度管理をすることで、病害虫を減らせます。
日々の水やりなどのときに朝顔の状態を観察し、健康に育ててあげてください。
朝顔は種を収穫して増やせる
朝顔の花を無事に咲かせられたら、種を収穫してみましょう。
花が咲き終わった朝顔は役目を終え、その年で枯れてしまいますが、種を収穫すればまた翌年も楽しむことが可能です。
朝顔の種の収穫時期
朝顔の種は、花が咲き終わった後に収穫可能です。種類にもよりますが、夏に花を咲かせる朝顔は、9月頃に種を収穫できるでしょう。
種を収穫したい場合は、花を摘み取らず放置します。すると次第に緑色の実が付き、だんだんと茶色くなってきます。
花びらの下の葉が反り返ってきたら、実の中に種ができたサインなので収穫しましょう。
種は保存して翌年に撒くことも可能
種の収穫ができたら、上手に保存して翌年撒けるよう準備をします。
そのまま保存するとカビの原因になりますし、保存場所が悪いと種が死んでしまうこともあるので、正しい処理方法が必要です。
保存方法が良ければ、数年は保存がききます。
- 採取した種を新聞紙など紙の上に置き、常温で湿度の低い場所で1~2ヶ月程度乾燥させる。
- しっかりと乾燥した確認したら、茶封筒などに種と乾燥材を入れる。
- さらにビニール袋やプラスチック製の食品保存容器などに入れてしっかり密閉し、湿度の影響を受けないようにする。
- 冷蔵庫の野菜室で、翌年の種撒きまで保管する。
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朝顔は初心者OK!夏に向けて育ててみよう
発芽の良さやつるや葉の成長の速さで、生命力を感じるのが朝顔です。
しかし、花はたった1日しか咲かない儚さを持ち合わせ、1年草ということでその年だけ楽しむことができるという、健気な植物でもあります。
朝顔のそんな粋なところが日本人の美的感覚に合い、長年愛されてきました。
初めての植物栽培にもおすすめできるほど、育て方は簡単です。「部屋にちょっと緑が欲しい」「子どもと一緒に育てたい」という気軽な気持ちで、栽培をスタートできるでしょう。
仕立て方にこだわるも良し、大輪の花を楽しむも良し、種を収穫して翌年に備えるのも醍醐味なのでぜひ今年の夏は、朝顔の栽培にチャレンジしてみてください。