チューリップを咲かせてみたい園芸初心者の方に向けて。この記事では、初めてでも簡単なチューリップの育て方と元気に育てるためのポイントをご紹介します。初心者にありがちな、よくあるQ&Aもあわせて参考にしてみてください。
【初心者】チューリップの成功しやすい育て方
春の花として、抜群の人気を誇るのがチューリップ。ひとめでチューリップとわかる愛らしいシルエットが大好きな方も多いでしょう。
チューリップは繊細そうな見た目ですが、育てやすい花です。重要な流れやポイントさえ押さえておけば、初心者でも綺麗に咲かせられますよ。
チューリップを育てる際の流れは、ずばり以下の通りです。
- 「鉢植え・プランター」「地植え」「水栽培」の違いを知る
- 花瓶や土など必要な道具を揃えよう
- 基本は9~11月に植え付けをしてスタートする
- 水やりは季節と育て方に応じて調節しよう
なお、チューリップの基本情報や種類、咲き方や花言葉は以下の記事で解説しております。ぜひあわせて確認してみてください。
「鉢植え・プランター」「地植え」「水栽培」の違いを知る
チューリップを育てる際には、最初に育て方(形式)を選ぶ必要があります。チューリップは「鉢植え・プランター」「地植え」「水栽培」の3種類で育てられます。
【チューリップの育て方(形式)の違い】
育て方(形式) | 特徴 |
---|---|
鉢植え・プランター | ・鉢植えやプランターを用意して育てる王道の形式・室内でも育てることができる ・場所を簡単に移動させられるため、トラブルにも対処しやすい |
地植え | ・庭や花壇などの地面に直接植え付ける形式 ・(十分なスペースがある場合)大きくのびのびと育ちやすい ・憧れのガーデニングに挑戦できる |
水栽培 | ・透明なコップや花瓶などを用意して、土の代わりに水を使って育てる形式 ・土特有の「見た目の重たさ」がなく、おしゃれなインテリアになりやすい ・土汚れの心配がないため置き場所を選びにくい |
3つの形式にはそれぞれ魅力があり、自分の好きなものを選んで大丈夫です。迷ってしまう場合は、育て方が確立されている王道の「鉢植え・プランター」が良いでしょう。
花瓶や土など必要な道具を揃えよう
形式を決めた次は、早速チューリップを育て始めるための道具を揃えていきましょう。必要な道具は選んだ育て方によって少しずつ異なり、以下の通りです。
【鉢・プランターのチューリップに必要な道具】
- チューリップの球根
- 深さが30cm以上の鉢もしくはプランター
- 鉢底ネット
- 鉢底石
- 水はけの良い土(市販の草花用の培養土でOK)
- 小さなスコップ
- 軍手
【地植えのチューリップに必要な道具】
- チューリップの球根
- 腐葉土
- 小さなスコップ
- 軍手
【水栽培のチューリップに必要な道具】
- チューリップの球根
- 透明な器あるいは花瓶
- 軍手
チューリップの球根は大きく重たく変色などがないものが◎です。また、球根や道具はいずれもホームセンター・通販・園芸ショップなどで簡単に手に入ります。
基本は9~11月に植え付けをしてスタートする
必要な道具が揃った後は、いよいよチューリップの球根の植え付け作業です。
チューリップの適切な植え付け時期は品種によっても異なりますが、通常は9〜11月に植え付け、春の開花を待ちます。形式別の具体的な手順を見ていきましょう。
鉢植え・プランター
鉢植え・プランターのチューリップの植え付け手順は以下の通りです。
【鉢植え・プランターのチューリップの植え付け手順】
- STEP1:鉢(もしくはプランター)の底に鉢底ネットを敷く
- STEP2:ネットが見えなくなる程度に鉢底石を入れる
- STEP3:水はけの良い土を入れる(鉢の上から数cmほどの高さまで)
- STEP4:球根2個分ほどの深さの穴を掘る
- STEP5:球根の尖っている方を上に向けた状態で穴に入れる
- STEP6:優しく土を被せてあげれば完了!
植え付け後の鉢は、寒さの厳しい日陰に置きます。球根から芽が出てきた後は、日当たりと風通しの良い場所に移動させてあげましょう。
地植え
地植えのチューリップの場合は、以下の手順で植え付けを行います。事前に土を消毒し、鉢・プランターよりも少し深めに植え付けるのが成功のポイントです。
【地植えのチューリップの植え付け手順】
- STEP1:植え付け予定場所の土を軽く掘り返し、ゴミや石を取り除く
- STEP2:2週間ほどそのまま日光に当てて、土を消毒する
- STEP3:適量の腐葉土を混ぜてチューリップが育ちやすい土にする
- STEP4:球根3個分ほどの深さの穴を掘る
- STEP5:球根の尖っている方を上に向けた状態で穴に入れる
- STEP6:優しく土を被せてあげれば完了!
植え付けの場所は、風通しと日当たりの良い場所を選んであげましょう。
水栽培
チューリップの水栽培では「春化処理」と呼ばれる疑似的に冬の寒さ→春の暖かさの流れを作り出す作業が必要となります。手順は以下の通りです。
【水栽培のチューリップの植え付け手順】
- STEP1:球根を紙の封筒や袋に入れて、冷蔵庫内の霜が当たらない場所に置く
- STEP2:2ヶ月ほど放置してから取り出す
- STEP3:球根の表面を覆う茶色い皮を手で優しく取り除く(取れない場合は放置する)
- STEP4:水栽培用に用意した容器に、尖った方を上に向けながら球根を置く
- STEP5:球根の底が水に触れる程度に水を入れ、暗く寒い場所に置く
- STEP6:発根後は「根の先が水に触れる程度の量」を意識しつつ、週に1回水を交換する
- STEP7:約1ヶ月後に芽が出たら、レースのカーテン越しに陽が当たる場所に移動させる
- STEP8:そのまま水やりを続けていると、2~4週間ほどで花が咲く
人為的に寒さと暖かさを与えることで、チューリップに春が来たのだと実感させましょう。
水やりも季節や育て方に応じて調節しよう
植え付けに成功したチューリップは、季節や育て方に応じた水やりを続けて開花を待ちます。
鉢植え・プランター
鉢植え・プランターのチューリップは、土の表面が乾くたびに、鉢底から水が流れ出るほどたっぷりと水やりをします。
植物の中には冬は水やりをしないものもありますが、チューリップの場合は植え付けから花が咲いて枯れるまで、水切れを防ぐために常に水やりを行ってください。
なお、気温の低い冬の水やりは、午前中の太陽が昇っている時間に行いましょう。寒さで水や苗が凍結するリスクを減らすことができます。
地植え
地植えのチューリップは基本的に水やりは必要ありません。自然の雨が水やりの代わりを果たしてくれます。
ただし、1週間以上雨が降らなかったときには、鉢植えやプランターと同様にたっぷりと水やりを行いましょう。
水栽培
水栽培のチューリップの水やり(水交換)は、週に1回ほどのペースで行います。また、植え付けの項目でご紹介した通り、適切な水の量は生育段階によって異なります。
- 根が出るまで:球根の底が触れる程度の量
- 根が出た後:根の先が水に触れる程度の量
ポイントとして、水栽培の水やりは継ぎ足すのではなく、完全に水を入れ替えるようにしてください。毎回入れ替えることで、水が腐ってしまう失敗を減らせます。
チューリップを元気に咲かせるためのポイント
続いて、チューリップを元気に咲かせるためのポイントも見ていきましょう。押さえておきたいのは、以下の3点です。
- 「球根腐敗病」などの病気に注意
- 「アブラムシ」などの害虫対策も大切
- 適量の肥料を与える
「球根腐敗病」などの病気に注意
チューリップは育てやすい花ですが、ときには「球根腐敗病」や「モザイク病」といった病気にかかることがあります。
- ・球根腐敗病
あと少しで開花するタイミングで、葉が黄色に変色し急速に枯れる病気
- ・モザイク病
花にモザイクのようにスジが入ってしまう病気。発症した苗は速やかに処分する必要がある
球根腐敗病は、球根の購入時に健康なもの(大きく重く、変色などがないもの)を選ぶことで予防できます。
一方、モザイク病は次のアブラムシが発症原因となるケースが多いため、適切に駆除&予防を進めましょう。
「アブラムシ」などの害虫対策も大切
チューリップはアブラムシの被害に遭いやすい花として知られています。
アブラムシはチューリップから汁を吸い、モザイク病をうつしたり、甘い糞を出してアリなどのほかの害虫を呼び寄せたりします。
アブラムシの対策&予防には、市販のスプレータイプの害虫駆除薬剤が有効です。たとえば『フマキラー』の“カダンセーフ”などは、吹きかけるだけでチューリップをアブラムシから守れます。
適量の肥料を与えるのが◎
鉢植え・プランターもしくは地植えのチューリップは、適量の肥料を与えるとより綺麗に咲きやすくなります。
「チューリップ用」や「草花用」として市販されている固形肥料か液体肥料を与えましょう。用法や用量は説明書に従い、勝手に増減をさせないことが大切です。
一方、水栽培のチューリップは基本的に肥料は必要ありません。しかし、綺麗に咲かない場合は、適量の液体肥料を与えるのがおすすめです。
ちなみに:2年目のチューリップは咲きにくい
ちなみに、同じ球根を使った2年目のチューリップは咲きにくいと知っていますか? これは、1年目の開花により球根が消耗するためで自然な現象です。
この消耗の関係上、チューリップの球根の再利用は難易度が高めです。初心者の場合は、毎年新たに購入することをおすすめします。
チューリップに関するよくあるQ&A
最後に、チューリップの育て方に関するよくあるQ&Aを確認していきましょう。
自分で増やすことはできる?
チューリップは、初心者が自分で増やすことは難しいのが実情です。
「分球」と呼ばれる開花後の球根を分割する手法はありますが、前述の通り2年目のチューリップは咲きにくく、成功の可能性も低くなります。
球根の再利用には病気を引き継ぐなどのリスクもあります。チューリップの数を増やしたい場合は、あらためて新品の健康な球根を購入しましょう。
花がら摘みはした方が良い?
チューリップは花がら摘みをしてあげることで、より健康に育ちやすくなります。
花がら摘みのタイミングは、花弁が散り始めるころです。軍手をして、花首(茎と花の境目)を手でちぎってあげましょう。
また、苗の周りに散った花はそのままにせず、拾って処分してあげてください。放置すると、病気や害虫発生の原因になることがあります。
水栽培でうまく咲かないのはなぜ?
水栽培のチューリップがうまく咲かない場合は、春化処理がきちんとできていない可能性が考えられます。
通常、チューリップの球根はそのまま水に入れるだけでは開花しません。前述の通り、冷蔵庫で2ヶ月ほど冷やし、冬から春の季節の移り変わりを疑似的に再現してあげましょう。
ポイントを押さえればチューリップを育てるのは簡単!
この記事ではチューリップの育て方について、初心者向けの方法や元気に咲かせるためのポイント、知っておきたいQ&Aをご紹介しました。
チューリップはポイントさえ押さえれば、初心者でも簡単に楽しめる花です。ご紹介した内容を参考に、ぜひ綺麗なチューリップを咲かせて、理想の空間を作り上げてくださいね。