テキーラの原料として有名なアガベは、バラのように広がる葉っぱが愛らしい観葉植物です。また、暑さにも寒さにも強い頑丈さを持ちあわせており、初めて育てる観葉植物にも向いています。今回はアガベの特徴や育て方、初心者でも枯らさないコツをご紹介します。
テキーラの原料になる多肉植物「アガベ」
アガベは、リュウゼツラン科・アガベ属の観葉植物です。メキシコを中心とするアメリカ大陸全土を原産地としています。
多肉植物の一種で、葉っぱや茎がふっくらとした愛らしい見た目をしているのが特徴です。地面からロゼット状(バラのような形)に広がる葉っぱに一目惚れする方も多く、エケベリアなどと並んで愛されています。
お酒好きの方のなかには、「アガベ」という名前に何か聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか?実は、アガベはお酒「テキーラ」の原料になる植物です。
テキーラは「アガベ・テキラーナ(英名:ブルーアガベ)」と呼ばれる品種の茎を蒸して、糖分を引き出し、発酵や蒸留を経て作られます。
アガベの品質がテキーラの出来を左右するといっても過言ではなく、現地では貴重な植物として大切にされているのです。
「雷神」「吹上(ストリクタ)」など豊富な品種
アガベは品種が豊富で、その数は300種類以上だといわれています。私たちがイメージするような手のひらサイズの愛らしいアガベから、5m以上の大きさになる巨大アガベまで、品種によって特徴はさまざまです。
観葉植物として人気の品種には、「雷神」や「吹上(ストリクタ)」が挙げられます。
雷神は、まるで雷のように青白い葉っぱが魅力の品種です。園芸店やホームセンターでよく市販されているため、知らずに目にしたことのある方も多いかもしれませんね。
小さめサイズなので、テーブルの上にちょこんと飾るインテリアとしても人気です。
一方の吹上(ストリクタ)は、ウニのトゲのような細く鋭い葉っぱが特徴の品種です。名前の「ストリクタ」は、ラテン語で「strictus(直立した、真っすぐな)」を表します。
シュッと真っすぐに伸びた葉っぱがスタイリッシュで、雷神同様に多くの方から愛されています。
ほかにも「ドラゴントゥース」や「カブトガニ」などユニークな名前の品種も売られており、「お気に入りのアガベ」を見つける楽しみがある植物です。
とても頑丈で初心者におすすめ
アガベは過酷な環境であるアメリカ大陸に原産しているだけあり、非常に頑丈です。
品種によって差はありますが、暑さ・寒さどちらに対しても強く、国内の多くの地域では屋外に出したまま一年を過ごせます。
日光も大好きなため、遮光カーテンなどで日差しを調節してあげる必要も滅多にありません。
初心者の入門用にも人気な植物ですから、もし見た目が気に入ったのであれば、ぜひ挑戦してみてくださいね。
アガベの育て方!必要な生育環境と枯らさないコツ
それでは、アガベの育て方を見ていきましょう。アガベは頑丈で、適切な生育環境さえ整えてあげれば元気に育つ、育てていて楽しい観葉植物です。
枯らしてしまわないように、日当たりや水やりなど、重要なポイントだけしっかりと押さえておきましょう。
日当たりの良さを意識する
温暖な地域を原産とするアガベは、日光が大好きな観葉植物です。元気に育てるためには、できるだけ長い時間日光が当たるような、日当たりの良い場所へ置いてあげましょう。
もし日光が不足すると、アガベは「徒長(とちょう)」を起こします。徒長とは、「不適切なほど大きく成長させてしまうこと」を意味する園芸用語です。
アガベの場合は、ヒョロヒョロと細長く、不健康そうな育ち方をしてしまいます。そのため室内で育てる場合も、休日は外に出すなど、たくさん日光を当ててあげてくださいね。
温度の変化には強い
品種にもよりますが、アガベは暑さにも寒さにも強い植物です。日本の気候であれば、氷点下を大きく下回り霜が降りるような場所でなければ、そのまま屋外で越冬もできます。
ただ温度には強いのですが、湿気は苦手です。特に夏場はすぐに蒸れてしまいますから、できるだけ風通しの良い場所に置きましょう。
水やりは控えめに
アガベは乾燥を好む植物ですから、水やりは控えめに行います。枯れにくいアガベを枯らしてしまう際には、水のやり過ぎが原因のケースも多いですから注意してくださいね。
水やりの頻度や時間帯は季節に応じて調節します。春と秋は、土が乾いた段階で、午前中に水やりを行います。
夏場は土が完全に乾いたあと、数日経ってから水を与えましょう。夕方~夜の時間帯に、鉢の底から水が流れ出るほどたっぷりと与えてください。日中に水やりをすると、水分が蒸発してアガベが蒸れてしまいますので、要注意です。
冬場、10月下旬〜3月中旬頃にかけては、アガベの成長はほとんどストップしています。いわゆる「休眠期」の状態です。
この時期の水やりは、月に1~2回とわずかな頻度で大丈夫です。時間帯は、夏場とは逆に暖かい日中を意識して行いましょう。
いずれにせよ、アガベはそれほど水を必要としない観葉植物です。アガベの様子を見て「弱っているかな?」と感じたときには、少し水やりを控えてみましょう。
生育期には肥料が必要
アガベの生育期である4~9月ごろにかけては、肥料を与えましょう。肥料を与えることで、アガベをより健康に育てられます。
肥料は、園芸ショップやホームセンターで市販されているものを購入すれば大丈夫です。
肥料の説明書をしっかりと読みつつ、液体タイプの肥料なら10日に1回、置き肥なら2ヶ月に1回くらいのイメージで与えましょう。
水はけの良い土を
土は「水はけの良い土」、特に多肉植物用の土がおすすめです。アガベは乾燥を好むため、水はけの良い土でないと段々と弱ってしまいます。
肥料同様にこちらもホームセンターや園芸ショップで市販されていますので、訪れてみましょう。
より元気に!アガベを枯らさないポイントとは?
アガベは頑丈で、水やり・日光・湿気に気をつけておけば、枯れる心配はそれほどありません。
しかし、いざというときに慌てなくて済むように、「病気」と「害虫」についても知っておきましょう。
病気に注意
アガベのかかりやすい病気には、「黒星病」と「さび病」が挙げられます。
黒星病
黒星病は、葉っぱに黒色の斑点が現れ、やがては葉が枯れ落ちる病気です。気温が高く(20~25度ほど)、ジメジメした時期によく発生します。
次々と葉っぱの色が変わるため、初めて見る方はビックリしてしまうかもしれません。
予防するためには、できるだけアガベを風通しの良い場所に置いてあげましょう。万が一かかってしまったときは、変色した部分を速やかにナイフやハサミで取り除いてください。
黒星病は糸状菌(カビ)が原因なため、放置しているとほかの健康な葉っぱにも移ってしまいます。早期発見と対処が大切です。
さび病
さび病も、黒星病と同様にカビを原因とする病気です。
初期症状では、アガベの葉っぱに黄色や白色、黒色や褐色などさまざまな色の斑点が現れます。放置していると葉っぱの形自体が歪みはじめ、最終的には枯れ落ちてしまう、恐ろしい病です。
気温が9~18度と比較的低温で、ジメジメしたときに発生します。
黒星病と予防や対策は同様で、風通しの良い場所に置きつつ、かかってしまった場合には速やかに取り除いてください。
害虫に注意
アガベに湧く害虫としては「アザミウマ」や「カイガラムシ」、「ハダニ」が有名です。いずれも数ミリ程度の小さな虫ですが、葉っぱから栄養を吸い、アガベを栄養失調に陥らせるため、注意しましょう。
対策として、アガベの葉っぱを鑑賞する際には、何か虫がついていないかチェックするよう心がけましょう。もしついていた場合は、ピンセットやテープで取り除くか、水で洗い流してしまえば大丈夫です。
害虫を放置していると繁殖してしまい、初心者が自力で駆除するのは困難になります。病気のときと同じく、速やかな発見と対処が重要です。
アガベの植え替え方法
最後に、アガベの植え替え方法についてご紹介します。アガベは植え替えが必要な植物で、適切に行ってあげないと「根腐れ(根っこが酸欠で腐り落ちる現象)」のリスクが高まってしまいます。
植え替えと聞くと大変そうですが、実際には初心者でも簡単に行えますよ。健康に育ててあげるためにも、ぜひ挑戦してみてくださいね。
植え替えは2年に一度
アガベに最適な植え替え頻度は、2年に一度です。4~5月ごろなど、アガベが休眠期に入っていない比較的暖かい時期に行いましょう。
手順は簡単で、以下の流れで行います。
- 水やりを数日控え、アガベの根っこが乾燥した状態を作る
- 軍手を使って、アガベを優しく土から取り出す
- 根っこについた土を1/3ほどになるまでそっと取り除く
- 新しい鉢(前回より大きめのもの)に優しく植える
- 2日~3日経過してから水を与える
時期さえしっかりと意識しておけば、何も心配する必要はありません。
増やしたいなら「株分け」を
もしアガベの数を増やしたいなら、「株分け」にも挑戦しましょう。株分けは、アガベの株から生えている小さな「子株」を切り取って、新しい鉢に植えて育てる方法です。
株分けは、植え替えと同じタイミングで行うのがベストです。事前にハサミやナイフを用意しておき、アガベを土から出した段階で、子株を根っこごと切り取って分離させましょう。
新しい鉢に植えたあとは、植え替え同様に数日経ってから水を与えればOKです。
園芸ショップなどで切り取りの道具さえ手に入れておけば楽々ですから、興味のある方はぜひ試してみてください。
生育環境を整えてアガベを元気に育てよう!
アガベは多肉植物特有のプニプニとした姿が愛らしい植物です。頑丈で温度の変化にも強く、水やりなどにさえ気をつけてあげれば、初心者でも安心して楽しめます。
品種も豊富ですから、「他の人と被らない、自分だけの観葉植物が欲しい!」という願いも、きっと叶えてくれますよ。この記事を参考に、ぜひアガベを育ててみてくださいね。