スラッと伸びた幹と、鮮やかなグリーンの葉がスタイリッシュなパキラは、初心者でも育てやすい人気の観葉植物です。サイズもさまざまあり、置く場所に合わせて選べるので、ぜひ育成にチャレンジしてみましょう。今回は、パキラを元気に育てる方法や、大きく成長させる植え替え方法などを解説します。
パキラは初心者にもおすすめな育てやすい観葉植物
パキラは和名で“カイエンナッツ”とも呼ばれ、中南米が原産の植物です。
子株の頃は幹が緑色でかわいらしく、成長すると灰緑色となります。葉は濃い緑のものが多く、楕円形に長く伸びているのが特徴です。
背の高いスタイリッシュな見た目はインテリア性が高く、日本でも観葉植物として親しまれています。
まずは、パキラがどのような性質を持つ植物なのか、詳しくチェックしましょう。
暑さや乾燥に強く生命力がある
パキラは中南米が原産ということで、暑さや乾燥に強い植物です。生命力も旺盛なので、ちょっとやそっとのことでは枯れません。
日陰や寒さは苦手ですが、他の植物と比べるとかなり耐性があります。
そのため、観葉植物初心者でも育てやすく、背が伸びていく成長過程を見る楽しみもあるので、おすすめしたい種類です。
スタイリッシュで美しい見た目
パキラが多くの人から人気なのは、そのスタイリッシュな見た目が観葉植物にぴったりだからでしょう。
大きく成長すると存在感があり、太い幹のものや三つ編み状になったものなど、まるでアートのようです。
また、シャープな葉が青々と茂る様は爽やかで、夏場には涼しさを感じさせ、冬場には葉の緑が部屋に色味を加えてくれます。
高さ20mにまで育つことも
自生しているパキラは、10~20mにまで成長する種類もあります。観賞用として楽しむものは1~2m前後で調整されていますが、それでも観葉植物のなかでは大きく育つ種類です。
幹が伸びる過程を見ると育てている実感がわき、愛着が持てるでしょう。
また、ミニ観葉植物として10cm程度の種類もあり、目的に合わせて選べるのも嬉しいですね。
花を咲かせることができる
緑の葉のイメージが強いパキラですが、実は花を咲かせることができます。
しかし、花を咲かせるのには種から育てられた実生株から育てなければならず、しっかりとしたメンテナンス技術も必要です。
また、花が咲くまで最低でも5~10年の年月がかかるので、初心者にはハードルが高かもしれません。しかし、「花を咲かせることを目標に育てる」、という楽しみ方もあるでしょう。
パキラの育て方
それでは実際に、パキラを元気に育てる方法を見てみましょう。
良いパキラの選び方
パキラを育てようと思ったら、まずは良いパキラを見つけることから始まります。
園芸専門店やホームセンター、ネット通販でも気軽に買える種類ですので、好みの種類やデザインの苗を見つけましょう。
実際に目で確かめられる場合は、病気にかかっていないか、害虫がついていないかをしっかりチェックしてください。
また、葉が黄色っぽいものは避け、濃い緑色でツヤのあるものを選ぶのがポイントです。
パキラを育てるときの環境
パキラは丈夫なので、特別に環境を作ってあげなくても大丈夫です。
ただ、より元気に育てるためにはパキラが苦手としているものは避け、快適に過ごせる環境下に置くことが必要なので、基本の環境作りをご紹介します。
水はけの良い土を選ぶ
パキラを育てるときの土は、水はけの良い観葉植物用の土を用意するのがおすすめです。
多湿を好むパキラですが、土に水分が長く残っていると根腐れを起こす可能性があるので、なるべく水はけの良いものを選びましょう。
また、自分で配合してこだわりたいという場合は、赤玉土と腐葉土を7:3の割合で配合するのがおすすめです。
温かい季節は屋外に出して日光浴させる
パキラは日光が大好きなので、温かな季節はなるべく外に出すのがおすすめです。すると元気よく幹や枝を伸ばし、葉の色が生き生きとします。
外に出さない場合も、窓際に置くなど日光を当るよう心掛けてください。ただ、直射日光に当てすぎると葉焼けを起こすので、レースのカーテンで軽く遮光をするなど工夫してみましょう。
屋内では風通しの良い場所に置く
ジメジメとした環境でもパキラは成長できますが、虫がわいたり病気を発生させてしまったりする可能性が高くなります。
なるべく風が通る場所に置くことで、パキラに余分な負担をかけずに済むので、換気を心掛けてください。
しかし、エアコンの風が直接当たると枯れることがあるので、当てるのは自然な風だけにしましょう。
冬の温度管理に注意
パキラは寒さには弱いので、日本での冬越しには注意します。
気温が5℃以下になると寒さに耐えられないこともあるので、冬場は外には出さず、温かい室内で育ててください。
冬場にパキラの葉が茶色くなり落ちてしまったら、それは寒さが原因かもしれません。葉が落ちても株が生きていれば復活できるので、温かい場所に移し芽吹くのを待ちましょう。
パキラの水やりの仕方
パキラは「土の表面が乾いていたら水やりをする」、というのが基本ですが、季節によって調整が必要です。
夏場の水やり
気温が高く日当たりが良好な夏には、土が乾いたらたっぷりの水をあげてください。目安は、受け皿まで水が流れ出るほどです。
一気に水を流し入れると、土のなかの古い空気が押し出され、新しい空気を送り込むこともできます。
あまり日当たりが良くないときは水やりは控えめにして、土もやや乾燥ぎみにすると根腐れを防げるでしょう。
冬場の水やり
冬になったら、夏の水やりよりも頻度や量を減らします。土が乾いたなと感じてから、2、3日後に水やりをするイメージで十分です。
ただ、真冬でも気温が15℃以上の地域では、夏場と同じように水やりをしてください。
葉水も忘れずに
土だけではなく、パキラの葉にも水をあげましょう。
葉に霧吹きなどで水を吹きかけることを“葉水”といい、適度な湿度を与えることができます。
また、病害虫から守る働きもあるので数日に1回程度は葉水をするのがおすすめです。
パキラの肥料の与え方
パキラは、肥料がなくても育てられる植物です。しかし、土へ栄養を補うためにも、4月〜10月のパキラの生育期に液体肥料をあげてください。
10日〜2週間に1回程度のペースで、幹の生え際あたりに液体肥料を挿してください。
緩効性化成肥料を使用する場合は、幹から少しずらして与えます。
大きくしたいなら追肥をしよう
パキラをどんどん大きくしたいという場合は、定期的に追肥をする必要があります。2、3ヶ月に1回のペースで追肥をし、しっかりと栄養を与え続けましょう。
ただ、冬場はパキラの休眠期なので、水分を吸う力が弱まってしまいます。その時期の追肥は根が弱くなる原因になるので、春まで与えないようにしてください。
伸びすぎたら適度に剪定
パキラは成長が早いので、幹が伸びるのと同時に新しい枝も伸ばしていきます。1~2年に1度は、見た目を整える意味でも剪定をしてあげましょう。
枝の切り方に決まったルールはなく、パキラは適当に切ったとしても新しい芽が生えてくるほど強い生命力があります。
そのため、見栄えが良くなるように調整しながら、怖がることなく枝の生え際から切ってみてください。
パキラはハイドロカルチャーでも育てられる
土で育てると、土が原因でパキラが弱ったり、虫がわいたりとトラブルも多いのが悩みです。
そこで、パキラは水で育てるハイドロカルチャーにしてみるのもおすすめです。
丈夫な植物にしかできない育成方法ですが、パキラはハイドロカルチャーでも元気に育てられるので、その方法を見てみましょう。
用意するもの
- パキラ
- ハイドロボール(発泡煉石)
- 根腐れ防止剤
- 水耕栽培用の液体肥料
- 底穴のあいていない器
土栽培されているもので良いので、パキラの苗を用意してください。
粒状にした粘度を焼いて作られているボールで、パキラを器の中で固定する役割があります。サイズはさまざまあるので、育てるパキラの大きさに合わせて選んでください。
ハイドロカルチャーの場合、水が器に滞留するので、不潔な水だと根腐れを起こしてしまいます。それを改善できるのが根腐れ防止剤で、“ゼオライト”や“イオン交換樹脂剤”とも呼ばれます。
土には多くの栄養が含まれているので、肥料を用意しなくて良いケースもあります。
しかし、ハイドロカルチャーでは栄養の補給ができないので、水耕栽培用の液体肥料を水に薄め、足りない栄養を与えましょう。
水が溜まる器なら何でも良く、ガラスやマグカップ、空き瓶など身近にあるもので飾ることができます。
おしゃれな器を楽しめるのが、ハイドロカルチャーのメリットのひとつでもあるので、好きな器を探してみてください。
ただ、水の残量がわかるよう、透明な器がおすすめです。
ハイドロカルチャーに植え替える手順
- 用意した器の底に、根腐れ防止剤を入れます。
- そこへ水洗いしたハイドロボールを、器の1/3程度まで入れましょう。
- パキラを土から抜き取り、ついている土は水洗いをしてきれいに流してください。バケツに水を張り、そこで根を揺らしながらすすぐと落としやすくなります。
- 器の中心にパキラを入れ、ハイドロカルチャーでしっかり固定しましょう。
- 水に液体肥料を溶かし、器の1/5~1/4まで注いでください。
パキラが枯れてしまう原因と対策
簡単に枯れることのないパキラですが、悪条件が揃うと元気をなくし、最悪枯れてしまうこともあります。
そうならないよう、パキラが枯れてしまう原因と対策をチェックしておきましょう。
水やりが少なすぎて水枯れした
頻繁な水やりは必要ありませんが、数週間水やりを忘れてしまったというような場合には、当然枯れてしまいます。
葉がしおれて下を向いていたり、茶色く変色していたりしたら水枯れを起こしているサインかもしれません。
たっぷり水をあげればOK
葉だけが枯れた状態なら、水をたっぷりあげれば株が元気を取り戻して水枯れ状態から救ってあげられるでしょう。
水のやりすぎによる根腐れ
反対に、水をあげすぎて枯れてしまうこともあります。生育期はたくさんの水やりが必要ですが、やりすぎや土の水はけが悪い場合は根腐れを起こしてしまうのです。
根が腐ると次第に幹や葉も腐っていくので、全体が腐ってからでは再生が難しくなります。一部分だけならまだ復活の可能性があるので、日頃のチェックを怠らないことが重要です。
腐った部分はカットする
根腐れが発覚したら一度土から優しく引き抜き、黒ずんだ根をカットしましょう。
白い根があればまだ生きている証拠なので、それを大切にまた土に戻し、元気になるのを待ってください。
日光のバランスが悪い
耐陰性に優れているパキラですが、本来は日光が好きな植物です。
日光が足りないと枝や葉が細く弱り、日光を求めて変な伸び方をしてしまい、直射日光に当てすぎると葉が枯れていくでしょう。
そのため、パキラを育てるときには、日光を与えるバランスが重要になります。
日々置き場所を変えてみよう
パキラを置いている場所の日当たりを確認し、日陰はなるべく避け、直射日光が当たる場合はレースのカーテンなどで遮光するようにしてください。
季節によっても日の当たり方が変わるので、日々置き場所を工夫するのがおすすめです。
パキラを育てるとき気をつけたい病害虫
パキラは基本的に病害虫にも強い植物ですが、環境が悪いと被害にあってしまうことがあります。
メンテナンスをしていなかったり、過剰に何かを与えすぎたりしたときに起こるので、パキラの状態を日々チェックすることが重要です。
病気は炭そ病などに注意
炭そ病とはカビによる病気で、通常元気な植物には付着してもすぐには発病しません。
しかし、日焼けや肥料の過不足、環境の急変などの悪条件が揃うと発病し、葉に淡緑黄色の細かい斑点が出てきます。
次第に葉の付け根へと広がり枯らしていくので、見つけたらすぐに切って対処しましょう。特に、春から秋の高温多湿期な時期に発生しやすいので、注意が必要です。
害虫はカイガラムシやハダニに注意
カイガラムシは温かい場所を好むため、室内の観葉植物に寄生しやすい害虫です。葉などから吸汁し、変色や葉枯れを招くので、見つけ次第すぐに対処しましょう。
ハダニは乾燥した場所を好むので、パキラの水やりを怠っていると寄生し、繁殖してしまう可能性があります。
放っておくと成長不良を招き、最悪の場合枯れてしまうこともあるので、寄生されやすい葉の裏などをチェックするようにしてください。
パキラは適度に植え替えをしてあげる
パキラは成長が早く、いつまでのサイズの小さい鉢で育てていると大きくなれません。ある程度育ったら、植え替えを検討しましょう。
また、購入したばかりのパキラでも、鉢で売られているもののなかには根がしっかり張っていないこともあるので、すぐに植え替えをしておくのもおすすめです。
パキラの植え替えのタイミング
次の症状が当てはまったら、パキラの植え替えのタイミングだと考え、早速植え替え準備をしましょう。
- 購入したから2年以上経った
- 株が大きく育ち、鉢とのバランスが悪い
- 鉢底にある穴から根がはみ出てきている
- 水を与えたとき、土に水が染み込みにくくなった
パキラの植え替えの時期
パキラの植え替えをする場合は、生育期である5月中旬から9月中旬くらいまでがおすすめです。
それ以外の時期の植え替えは、パキラの根がうまく張らりずらく、弱ってしまうと枯れることもあるので気をつけましょう。
生育期を過ぎているなら無理に植え替えをせず、次の生育期を待ってください。
パキラの植え替えの手順
用意するもの
- 株より一回り大きな鉢
- 観葉植物用の土
- 鉢底ネット
- シャベルやスコップ
植え替えの手順
- 植え替えを決めたら数日前から水やりを控え、土を乾燥させておきます。
- 新しい鉢の底に鉢底ネットを敷き、必要であれば鉢底石を敷きましょう。そして、スコップなどを使って土を鉢の1/3程度入れておいてください。
- 鉢からパキラを抜き、ついている土を1/3程度落としましょう。
- 抜き取ったときに根の状態を確認し、黒ずんでいる部分は切り落としてください。
- 鉢の中心にパキラを入れ、ぐらつかないようにさらに土をかぶせましょう。
- パキラが安定したら、水をたっぷり上げてください。
植え替え直後は、人間でいう手術直後と同じ状態なので、優しく丁寧に扱いましょう。
また、元気になるようにと肥料を与えたくなりますが、栄養が処理しきれずに枯れてしまうこともあるので、落ち着くまでは与えないようにしてください。
パキラを増やしてみよう
パキラはひとつの苗があれば、増やして楽しむことができます。
方法①挿し木
- パキラの枝を先端から10〜15cmの長さで切り、“挿し穂”を作ります。
切る枝は剪定を行ったときのものでも良いので、適当な切り枝を用意してください。このとき切り口を斜めにすると、水がよく吸えるようになります。
- 枝の下部に葉があると邪魔なので、ある程度取っておきましょう。
- 土を入れた鉢を用意し、そこに挿し穂を挿します。
土を軽く押して枝が安定するようにし、水をたっぷり上げて根が生えるのを待ちましょう。
方法②種まき
- パキラの種は自分で採取するのは大変難しく、日本ではあまり流通していないので、海外サイトやオークションサイトなどで購入するのがおすすめです。
- 種を水に浸けて、水没検査をしてみましょう。芽が出る種は水に沈むといわれているので、発芽の確率が高い種を見極めることができます。
- 発芽する種はわずかな水でも発芽を始めるので、水に浸けて置いたり、ミズゴケで包んだりして様子を見ましょう。発芽しないものは、ここで腐敗します。
- 無事に発芽したものは土を入れた鉢に入れ、安定させてください。
- 土が乾かないよう水やりをしながら、大きく育てましょう。
日本で流通しているパキラの代表的な品種は2種類
パキラは20種類ほどの品種があると言われていますが、日本で流通しているのは“パキラ・グラブラ”と“パキラ・アクアティカ”の2種類です。
ほとんどはパキラ・グラブラですが、パキラ・アクアティカの見極めは難しく、育て方の違いなどはないので、どちらを購入しても良いでしょう。
花で見極めることができる
ぱっと見では違いが分からないパキラ・グラブラとパキラ・アクアティカですが、グラブラの方は雄しべが白一色で、アクアティカの方は雄しべには赤が混ざっているので、花が咲くと見極めることができます。
しかし、日本で花が咲いているところを見られることはほとんどないので、葉の形でも見極めてみましょう。
アクアティカのほうが葉の色が濃く、若干丸みのある形となっているので、じっくり見比べれば判別できるかもしれませんね。
パキラの幹や葉はさまざま
パキラは同じ種類でも、幹や葉の形が異なります。
幹は太い朴のものや、三つ編み状のものなど個性が強く、好みのデザインを探す楽しみがあるでしょう。
葉は多くは濃い緑ですが、なかには斑が入っている珍しい種類もあり、インテリアのアクセントにすることもできますよ。
正しい育て方でパキラを元気に大きく育てよう!
パキラは暑さや日陰にも強く、ちょっとのことでは枯れることのない丈夫な観葉植物です。
そのため初心者でも扱いやすいですが、せっかくなら大きく育つ特性を生かし、元気に育てていきたいですよね。
パキラは基本の観葉植物の育て方を大切にし、適度に植え替えを行うことでどんどん成長させられます。今回ご紹介した方法を参考に、愛情を持って育ててあげてください。