美しい姿と香水になるほど良い香りが魅力のラベンダーは、初心者でも自宅で楽しむことができる花です。この記事では、ラベンダーをゼロから育てる方法と美しく咲かせるためのポイントをご紹介します。よくあるQ&Aと一緒にチェックしていきましょう。
ラベンダーは家庭でも咲かせることができる花!
ラベンダーは可憐な見た目とフローラルな優しい香りが人気の花・ハーブです。シソ科ラバンドゥラ属に分類され、地中海沿岸を原産地としています。
北海道富良野のラベンダー畑に代表されるように、ラベンダーは広大なスペースで群生する花だと思っている方も多いのではないでしょうか?
しかし実は、ラベンダーは育て方を知っておけば家庭でも綺麗に咲かせられます。まずは、ラベンダーを育てるときに知っておくと楽しめる、3つの豆知識から見ていきましょう。
リラックス効果を期待できる香りが特徴
ラベンダーの香りにはリラックス効果を期待できるとされており、ヨーロッパでは昔から人々の生活と関わりの深い植物として愛されてきました。
その香りの良さは「ハーブの女王」と呼ばれているほどです。
ラベンダーという名前は、ラテン語の「Lavare(ラヴァーレ:洗う)」が語源といわれています。大切に育てて香りを楽しめば、心が洗われる時間を満喫できるでしょう。
品種により暑さや寒さへの強さが違うのがポイント
ラベンダーは品種によって苗の性質が大きく違い、暑さや寒さへの強さもまったく異なるのが特徴です。
そのため、家庭で楽しむ際には、自分が住む環境に適した品種を選ぶと上手に咲きやすくなります。
ラベンダーの品種は5種類の系統に大別できます。それぞれの特徴は以下の通りです。
【ラベンダーの代表的な品種の系統と特徴】
品種系統 | 特徴 |
---|---|
ラバンディン系 | ・暑さに強く、国内の幅広い地域で育ちやすい人気品種 ・花穂(かすい:稲穂のように咲く花部分のこと)が大きく美しい ・生育も早いため育てていて楽しく、初心者にぴったり |
アングスティフォリア系 | ・寒さに強く、東北や北海道でも元気に育つ品種 ・ラベンダーの中でも特に香りが良く、香料の原料としてよく使われている ・別名「イングリッシュラベンダー」とも呼ばれる |
ストエカス系 | ・高温多湿に強く、雨の多い地域でも育てやすい品種 ・花穂の先端に、ウサギの耳のような可愛らしい飾りが付く ・冬場に氷点下を下回る地域では防寒対策が必須 |
デンタータ系 | ・暑さに強いが、寒さにはそれほど強くない品種 ・しかし四季咲きの性質を持ち、上手に育てると冬にも開花する ・葉に歯のような(dental)ギザギザした切れ込みが入る |
プテロストエカス系 | ・寒さに弱い品種 ・一見するとラベンダーではなさそうな個性的な見た目のものも多い ・香りも少し弱めで、こだわりがない場合はほかの系統をおすすめ |
品種は好きなものを選んで良いですが、迷ってしまう場合は育てやすく鑑賞効果や香りに優れた「ラバンディン系」か「アングスティフォリア系」をおすすめします。
花言葉は「期待」や「あなたを待っています」
ラベンダーの花言葉には「期待」「あなたを待っています」「優美」など素敵な内容があります。
一方で、ラベンダーは「疑惑」「沈黙」といった少しネガティブな意味の花言葉も持つため、ギフトとして贈る際には注意が必要です。
風水や占いが好きな方や目上の方に贈るのは避けた方が良いでしょう。
【初心者】ゼロからできるラベンダーの育て方手順
ここからは、ラベンダーを家庭で咲かせるための手順をご紹介します。今回は初心者でも挑戦しやすいように、ゼロからの実践方法を見ていきましょう。
「鉢植え・プランター」か「地植え」か決める
最初の作業は、ラベンダーを「鉢植え・プランター」と「地植え」のどちらで育てるのか決めることです。両者にはそれぞれ以下のような特徴があります。
【ラベンダーの鉢植え・プランターと地植えの違い】
植え方 | 特徴 |
---|---|
鉢植え・プランター | ・鉢やプランターにラベンダーを植え付ける方法 ・置き場所を簡単に変えられるため、トラブルを避けやすい ・植え替えなど鉢植え ・プランターならではの手入れは必要 |
地植え | ・庭の地面や花壇などに直接植え付ける方法 ・基本的に水やりが不要であるなど育てやすさ◎ ・環境を簡単に変えられないため、台風や大雨などの被害に遭いやすい |
方向性として、小まめにお世話をして大切に育てていきたい方には「鉢植え・プランター」を、より手軽にラベンダーを楽しみたい方には「地植え」をおすすめします。
必要な道具を準備する
植え方を決めた後は、ラベンダーを育てるために必要な道具を準備していきましょう。鉢植え・プランターと地植えで道具は少し異なります。
- 現在よりも一回り大きい植木鉢(もしくはプランター)
- 鉢底石
- 鉢底ネット
- 水はけの良い土(市販のハーブ用の培養土でOK)
- 遅効性肥料
- 軍手
- 自分の選んだ品種のラベンダーの苗
- 堆肥もしくは腐葉土
- 石灰
- 遅効性肥料
- 軍手
道具はいずれもホームセンターや園芸ショップ、通販で市販されているアイテムで大丈夫です。
植え付けは3~4月がベスト
初心者の場合、ラベンダーの植え付けは春(3〜4月)に行うのが最適です。
初秋(10月頭ごろ)に植え付けることもできますが、冬越しの問題が出てくるため、基本的には春からのスタートをおすすめします。
ラベンダーの植え付けの手順は、鉢植え・プランターと地植えで異なります。
鉢植え・プランターの植え付け手順
鉢植え・プランターのラベンダーの植え付けは以下の流れで行えます。
- STEP1:新しい鉢(あるいはプランター)の底に鉢底ネットを敷く
- STEP2:ネットが見えなくなる程度に鉢底石を入れる
- STEP3:土と遅効性肥料を混ぜ合わせ、鉢の8割ほどまで入れる
- STEP4:現在の鉢からラベンダーをそっと取り出し、根の先端を少しだけほぐす
- STEP5:新しい鉢にラベンダーを移動させて、残りの土を入れる
- STEP6:一度たっぷりと水やりをして、土の中で苗を固定してあげれば完了
植え付け後のラベンダーは、1週間程度は日差しの強すぎない半日陰(例:レースのカーテン越しに陽の当たる場所)に置きましょう。
環境に馴染ませた後は、日当たりの良い場所へと移動させてあげてください。
地植えの植え付け手順
地植えのラベンダーの場合は、植え付け前に土を日光に当てて消毒してあげるのが成功のコツです。
- STEP1:ラベンダーの植え付け場所を決める(日当たりと風通しの良い場所が◎)
- STEP2:植え付けの2週間ほど前に、予定場所の土を掘り、堆肥か腐葉土を混ぜておく
- STEP3:植え付けの1週間ほど前に、今度は石灰と遅効性肥料を土に混ぜておく
- STEP4:現在の鉢より一回り大きな穴を掘る(株同士は30~60cmほど間隔を空ける)
- STEP5:現在の鉢からラベンダーを取り出し、優しく根の先端をほぐして植え付ける
- STEP6:一度たっぷりと水やりをしてあげれば完了!
水やりは育て方と季節に応じて調節する
植え付けに成功した後は、水やりなどの通常のお世話を続けていきましょう。ラベンダーの水やりは育て方(植え方)と季節によって調節します。
鉢植え・プランターのラベンダーの水やりは、土の表面が乾くたびに、鉢底から水が流れ出るほどたっぷりと与えます。
注意点として、夏の昼間に水を与えると蒸発して蒸れやすくなるため、早朝か夕方に水やりをするのがおすすめです。
一方、地植えのラベンダーは、基本的に水やりは必要ありません。
ただし、何日も晴れの日が続いたり、真夏で土が乾燥していたりするときには、鉢植え・プランターと同様にたっぷりと水を与えましょう。
春と秋に肥料を与えよう
ラベンダーの育て方としてもうひとつ大切なのが、毎年、春と秋に遅効性の肥料を与えることです。
花が咲く前の3〜4月ごろと、花が終わった後の9月ごろに肥料を与えるとラベンダーは元気に育ってくれます。前述の植え付け手順ではすでに肥料を与えているため、次は秋が適切なタイミングです。
肥料はラベンダーやハーブ対応のものを選び、説明書の用法・用量を守って与えるのみで大丈夫です。
たとえば『花ごころ』の“ハーブ・香草の肥料”などは、豊富な栄養成分がラベンダーの香りや花色を魅力的に引き立ててくれます。
ラベンダーを綺麗に咲かせるためのポイント
では、ラベンダーをより綺麗に咲かせるためのポイントもチェックしていきましょう。大きく以下の3点が重要となります。
- 害虫対策
- 蒸れ対策
- 適度な刈り取りと剪定
ラベンダーは害虫被害に遭いやすい植物ではないですが、それでも「アブラムシ」や「ハダニ」が寄ってくることがあります。
【ラベンダーを育てるときに気を付けたい害虫】
- アブラムシ:ラベンダーの苗から汁を吸う害虫。甘い排泄物を出すため、ほかの害虫を呼び寄せる原因になる
- ハダニ:同じく苗から汁を吸う害虫。吸われた部分が白く変色してしまうため、ラベンダーの見た目が悪くなる
対策として、風通しの良い場所で育てることを徹底しましょう。
何度も被害が繰り返される場合は、『住友化学園芸』の“ベニカXネクストスプレー”のような害虫駆除スプレーを活用するのもおすすめです。
病気には強いが「蒸れ」に注意
ラベンダーは病気にかかりにくい比較的頑丈な植物ですが、多くの品種は蒸れ(過湿)を苦手としています。苗が蒸れると、葉が灰褐色などに変色し枯れてしまいます。
対策としては、害虫予防と同じく風通しの良い場所で育てることが重要です。
また、「夏の昼間に水やりをしないこと」と次の「適度な刈り取りと剪定をすること」を意識してあげましょう。
適度に刈り取りと剪定をしてあげよう
ラベンダーは適度な「刈り取り(花穂の収穫)」と「剪定」をしてあげると、蒸れを避けて元気に育ちやすくなります。刈り取りは夏ごろ、剪定は秋〜初冬の作業です。
刈り取り(花穂の収穫)
刈り取り(花穂の収穫)は、ラベンダーの花をバッサリと切り取ってあげる作業です。ラベンダーは花が満開になる少し前にこの刈り取りをすることで、株の消耗を避けられます。
刈り取りの方法は簡単で、剪定ばさみを使ってラベンダーの丈の長さが半分になる位置で切り取ってしまうのみです。
収穫後のラベンダーは、ドライフラワーや切り花として活躍してくれます。
剪定
ラベンダーは生育が早く、刈り取り後にもグングンと丈が伸びてきます。秋〜初冬にかけて、来年にも綺麗に咲いてもらうための準備として剪定を行いましょう。
剪定の方法は刈り取りと似ており、今度は丈の長さが1/3になる位置でバッサリと切ってしまえばOKです。
ラベンダーは1~2年に1度は植え替えをしよう
鉢植え・プランターでラベンダーを育てている場合は、1〜2年に1度を目安に植え替えもしてあげましょう。
植え替えを怠ると、鉢の中で根が伸びるスペースがなくなり、根詰まりや根腐れの原因になってしまいます。
植え替えは4〜5月ごろ、もしくは10月ごろに行います。必要な道具と手順は植え付け時と同様であるため、前述の項目をご確認ください。
数を増やしたいときは「挿し木」がおすすめ
もし、ラベンダーの数を増やしたいのであれば、挿し木をするのがおすすめです。挿し木とはラベンダーの一部を切り取り、新たな苗として育てる方法を指します。
ラベンダーの挿し木に必要な道具と手順は以下の通りです。時期は暖かい春に行いましょう。
- 挿し木用として販売されている土
- 挿し木用のポット
- コップ
- 剪定ばさみ
- STEP1:ラベンダーの先端から10cmほどを切り取る(挿し穂を用意する)
- STEP2:コップに水を入れ、切り口を水に漬けて1時間ほど放置する
- STEP3:挿し木用のポットに土を入れ、指で軽く穴を空けて挿し穂を植える
- STEP4:日陰に置き、1ヶ月ほどは水が切れないように管理する
- STEP5:根が生えた後、通常の手順で植え付けを行う
ちなみに、ラベンダーは大切に育てていても3年ほどで咲きにくくなる性質があります。
「花の付き方が悪くなったかな?」と感じたときにも、挿し木で新たな苗に生まれ変わらせてあげましょう。
ラベンダーの育て方に関するQ&A
最後に、ラベンダーの育て方に関するよくあるQ&Aをご紹介します。
冬越しはできる?
ラベンダーは品種にもよりますが、冬越しができる花です。冬越しは気温5度前後の環境がベストで、地面に積雪や凍結の恐れがあるかどうかで作業が変わります。
【ラベンダーの冬越し】
- 積雪の恐れがある:雪の重さで枝が折れないように、縄でひとまとめに縛っておく。鉢植えの場合は、地植えに変更するか、玄関先などのほどよく寒い場所で管理するのが◎
- 凍結の恐れがある:ウッドチップなどで土を覆い凍らないように対策する。鉢植えの場合は、同じく玄関先などのほどよく寒い場所で管理するのが◎
- 暖かい地域:通常は特に作業不要。霜が当たらないように気を付ける
注意点として、ラベンダーはあまり暖かい場所で冬越しをさせると翌年の花が咲きにくくなります。室内に入れる場合も、気温が5度前後の涼しい場所を探してみてください。
室内で育てても良い?
こちらも品種にもよりますが、ラベンダーは室内で育てることができる植物です。ただし、品種ごとに求められる環境は必ず守るようにしましょう。
特に、気温25度を超えるような暖かすぎる環境や、ジメジメと湿度の高い場所では、ラベンダーが病気にかかりやすくなってしまいます。
種まきから育てることはできる?
初心者の場合、ラベンダーは苗を購入して植え付けを行うのが、成功率が高くおすすめです。
しかし、以下の道具と手順で種まきから育てることもできます。
- 好きな品種のラベンダーの種
- 種まき用のトレー(あるいは小さなポット)
- 種まき用の土(パーライトやバーミキュライトも可)
- 発根促進剤
- 霧吹き
- STEP1:冷蔵庫を使ってラベンダーの種を2週間ほど冷やす
- STEP2:発根促進剤(指定の割合で水で希釈したもの)に種を3日ほど漬ける
- STEP3:トレーに種まき用の土を7割ほど入れる
- STEP4:指で小さなくぼみを作り、そこに2~3粒ずつ種をまく
- STEP5:2~3mmほど土をかぶせて、半日陰に置く
- STEP6:乾燥しないように霧吹きで水を与え続ける
ただし、ラベンダーは発芽率が低く種まきから育てるのは大変です。最初は苗から育てて、慣れてきた方のみ挑戦してみてください。
ポイントを押さえてラベンダーを美しく咲かせよう
この記事ではラベンダーの育て方について、ゼロからの手順や綺麗に咲かせるためのポイント、よくあるQ&Aをご紹介しました。
ラベンダーは畑のような広々とした場所で楽しむイメージの強い花ですが、ポイントを知っておけば自宅で育てることもできます。
ご紹介した内容を参考に、ぜひ美しいラベンダーを咲かせてくださいね。