コウモリランは、ビカクシダという別名でも呼ばれている観葉植物です。独特な容姿をしていることから、インテリアとしても存在感があります。丈夫なので、初心者にも育てやすいです。今回は、コウモリランの育て方や枯らさないコツ、お手入れ方法などをご紹介します。
コウモリランとはどんな観葉植物?
まずは、コウモリランがどのような特徴を持つ観葉植物なのか見ていきましょう。
シダの仲間で着生植物の一種
コウモリランは、ビカクシダという別名を持つ、樹木や岩などに付着して生育する着生シダです。ウラボシ科ビカクシダ属(プラティセリウム、プラティケリウム)に分類されます。
東南アジアやマダガスカル、オーストラリアなどの熱帯地域に15種類または18種類の原種がある植物です。
ビカクシダを漢字で書くと「麋角羊歯」となり、“麋”は大鹿を意味し、シカの角のような葉が由来になっています。また、コウモリが羽を広げたような姿にも見えることから、コウモリランとも呼ばれるようになったのです。
特徴的な2種類の葉を持つ
コウモリランは、前方向に伸びる“胞子葉”と、株元の“貯水葉”の2種類の葉を持っているのが特徴です。
胞子葉は“繁殖葉”とも呼ばれ、葉の裏側に胞子が付きます。通常は緑色で、寿命になると葉が褐色に変わり根元から抜け落ちます。シカの角のような見え、大きく成長する葉です。
貯水葉は、外套葉や付着葉、栄養葉、落ち葉止め葉、泥除け葉など、いろいろな呼び方があります。新根から成長し、始めは緑色をしていますが、寿命がくると枯れて茶色に変わります。
しかし、貯水葉は枯れても水分や養分を蓄えるスポンジのような役割をしてくれるので、枯れても取り除かないようにしましょう。
他にも、自身を木に着生させて支えになる大切な役割を持っています。また、手のひらを上に広げたように広がる種類が多くあります。これは、上から落ちてきた落ち葉や虫の死がいなどを、細菌で分解して、株の養分にするためです。
枯れた貯水葉も自らの細菌で分解されて養分に変えてしまうという、コウモリランだけの特殊な性質も持っています。
乾燥に弱い
コウモリランは高温多湿の環境を好むので、乾燥に比較的弱いです。成長するにつれて、だんだん乾燥に強くなっていくのですが、小さいうちは乾燥に弱いため4号鉢以下になる場合は注意が必要です。
土や水苔が乾いたらたっぷりの水やりをしたり、それ以外にも葉水で乾燥しないようにしましょう。
寒さに弱い
コウモリランは、10度以上の温度をキープして育てるのが望ましいです。難しい場合は、最低でも5度以上の気温がある環境で育てるようにしましょう。
氷点下にならない限り、冬を越すことができます。より元気な状態で冬越しをさせたい場合は、暖かい室内に置いて管理するのがおすすめです。
コウモリランの育て方!必要な生育環境と枯らさないコツ
コウモリランは丈夫な観葉植物なので、初心者でも育てやすいです。より元気に育てるために、必要な生育環境と枯らさないコツを見ていきましょう。
日当たりの良い場所に置く
コウモリランは、アフリカやマダガスカルなどの熱帯地域に自生している植物のため、日光を好みます。日の当たらない日陰などで管理すると、葉の色が黄色く変色してしまうこともある植物です。
ただ直射日光には弱いため、夏の強い日差しに長時間当ててしまうと、葉焼けを起こしてしまうこともあります。
そのため日差しが強い夏場だけは、日陰か室内で管理しましょう。室内では、レースカーテン越しに日光を当てるなどして、光を調節してください。
季節によって水やりを変える
コウモリランは、冬と他の季節では水やりの方法を変える必要があります。
冬場は、あまり水やりをしなくても大丈夫です。乾かし気味に育てることで、寒さに強くなり、冬を越しやすくなります。
冬場以外は、チップや水苔が乾いてきたら、水やりをしましょう。霧吹きを使って、葉と植え込みの両方に水を与えるようにしてください。
2~3日くらいなら水やりを忘れても、十分元気に育ってくれます。チップや水苔が乾いていない場合であれば、水やりは必要ありません。水を与えすぎると、枯れてしまうおそれがあるので注意してください。
寒い時期には室内に入れる
コウモリランは、10度以上の温度がキープできる場所で育てるのが理想的です。5度までは耐えられますが、葉が傷んだり、株を傷めたりするおそれがあるので、10度以下になる寒い季節には室内で育てるのがおすすめです。
室内の日当たりが良い場所で育てましょう。冬の室内は意外と乾燥しているので、霧吹きで葉水をしてあげてください。
水はけの良い土を使う
コウモリランを鉢植えで育てるときは、ピートモス8:パーライト1:軽石(小粒)1か、ピートモス7:パーライト2、軽石(小粒)1の割合で混ぜた配合土を使うのが良いでしょう。
コウモリランは、水はけの良い土、保水性の高い水苔を使うのがおすすめです。ハンギングやヘゴ板で室内に飾る場合は、水苔を使い、コウモリランを着生させましょう。
肥料は成長期に与える
コウモリランは肥料がなくても育てることができます。しかし、肥料を与えた方が生長が早くなり、元気に育ってくれます。
冬場の生長が緩慢になる時期に肥料を与えてしまうと、肥料やけを起こす可能性があるため、春~秋の成長期に与えるようにしましょう。
2~3ヶ月に1回、葉の付け根の部分にある外套葉の下の水苔に、緩効性化成肥料を与えます。株をあまり大きくしたくないなら、肥料の量を少なくします。
コウモリランを育てる際に注意すべき害虫・病気
コウモリランを育てるうえで、注意が必要なのはカイガラムシという害虫と、炭そ病という病気です。それぞれの特徴と対処法をご紹介します。
カイガラムシ
コウモリランは、カイガラムシに気をつけましょう。年間を通して発生するのですが、特に注意が必要なのが生育期の5~7月です。
体長2~10mmほどの小さい害虫で、コウモリランに寄生すると、葉や茎から養分を吸い取り成長するため、植物を枯らしてしまいます。カイガラムシを放置しておくと、排泄物によってスス病という病気にかかる原因となるので、見つけたら早めに駆除しましょう。
幼虫の場合は殺虫剤を使って駆除できます。しかし、成虫になると体全体に硬い殻をまとうため薬剤が効きにくく、歯ブラシなどを使って地道に取り除くしかなくなります。
そうならないためにも、こまめに観察して、見つけたら早めに駆除するようにしましょう。風通しの良い、明るい清潔な場所で育てることで、カイガラムシが発生しにくくなりますよ。
炭そ病
コウモリランがかかりやすい炭そ病は、葉に穴が空いたり、枯れてしまったりして、植物を弱らせてしまう病気です。春から秋にかけての高温多湿の環境で葉に発生しやすくなります。
炭そ病は、葉に黒褐色の斑点が出て、次第に範囲が広がってしまいます。炭そ病にかかったら、すぐにその葉を取り除いて、薬剤を散布しましょう。
コウモリランを育てる際に生じやすいトラブル
コウモリランの元気がなくなったり、枯れてしまったら、何かしらのトラブルになっているサインです。原因を早めに突き止めて、早めに対処しましょう。
ここでは、生じやすいトラブルの一部とその対処法をご紹介します。
胞子葉が下に垂れ下がった
胞子葉が垂れ下がった場合は、水不足を疑いましょう。早急にコウモリラン全体に水をかけるか、バケツなどに水を張ってコウモリランごと浸けて、植込み材に水を吸わせてあげます。
乾きすぎた水苔は、すぐに水を吸わない場合があるため、時間をかけてしっかりと水を与えてください。
胞子葉がしわしわになった
胞子葉がしわしわになった場合は、水不足か葉焼けが考えられます。コウモリランは乾燥に強いですが、乾燥しすぎると垂れ下がって、しわしわになることがあります。
水不足の場合は、水やりをすると復活することが多いので、たっぷり水を与えて観察しましょう。
葉焼けの場合は、直射日光が当たらない場所に移動させて、レースカーテン越しなどで日光が当たるようにしましょう。
急に茶色くなった
急に茶色くなって枯れ込みが進んでいる場合は、寒さにあたってしまった可能性が高いです。室内であっても冬場の窓際は、日中と夜の温度差が大きいです。また、冬場に冷たい水を与えてしまうと寒さの被害を受けることもあります。
そのため、冬場は温度変化があまりない場所で管理しましょう。コウモリランは茶色くなってしまっても、成長点(胞子葉が出る中心部)が生きていれば回復する可能性があります。
貯水葉が茶色く変色した
貯水葉が茶色く変色したら、根腐れのサインです。貯水葉の根元が変色していないか見てみましょう。水を与えすぎて水苔がずっと湿っていると、根っこが蒸れて息ができなくなります。
水やりを控えめにして、一度水苔を乾かすことで復活することがあるので、乾燥させて観察してみてください。
コウモリランのお手入れ方法
コウモリランは、2~3年に1度植え替えをすることで元気に育てることができます。また、株分けや胞子から増やすことも可能です。
それぞれの詳しいやり方をご紹介します。
2~3年に1度は植え替えをする
コウモリランは、成長すると根詰まりなどを起こす原因となるため、2~3年に1度植え替えをするのがおすすめです。5月中旬~9月中旬が適している時期なので、この間に行いましょう。
植え替えの詳しいやり方は以下の通りです。
- コウモリランを鉢植えから出す
- 根に付いている土や水苔をもみほぐして取り除く
- 新しい水苔を丸めて苔玉のようにし、根をのせてさらに水苔で巻く
- 鉢の底に軽石や発泡スチロールを敷きつめる
- コウモリランを鉢に入れて、隙間に水苔を敷きつめる
- 鉢ごと水に沈めて、水苔に水を吸わせる
- 水を完全に吸ったら、半日陰に置いて管理する
こちらは水苔で鉢植えする方法です。用土を使って植え替えする場合は、鉢底ネットと鉢底石を敷いて、用土を入れてから植え替えしてください。
他にもヘゴ板に着生させるヘゴ付けも人気です。
「株分け」で増やせる
コウモリランは、株分けすることで数を増やすことができます。
親株の貯水葉の下から出てきた子株の葉が3枚以上あれば切り取り、ヘゴ板や鉢に植え替えます。5~8月頃が適した時期です。1ヶ月間ほど、明るい日陰に置いて育てましょう。
詳しいやり方は以下の通りです。
- 鉢からコウモリランを取り出す
- 根に付いている土をほぐす
- 2つの株に分ける
- 1つの株の場合は、根の部分からはさみなどを使って2つの株に分ける
- 土やハイドロボールなどに植え込むか、板付けする
3~5株以上を1株としてわけるのがおすすめです。
胞子から増やすことも可能!
コウモリランは胞子から増やすこともできます。胞子での増やし方は以下の通りです。
- 葉の裏に付いている胞子をスプーンなどで剃り取る
- 深い受け皿に湿った土を敷く
- その中に胞子を蒔く
- 土は常に湿らせておかなければいけないため、ラップなどで蓋をする
20度くらいの気温を常に保つようにして、明るい日陰で管理してください。表面の土が乾きそうだと思ったら、霧吹きを使って湿らせます。
目が届きやすい場所に置き、土が乾かないように注意しましょう。成功すると発芽して、たくさんの芽がでてきます。
コウモリランのおしゃれな飾り方|板付やハンギングの方法
コウモリランは、鉢植えで育てることもできますが、板付(板づけ)やハンギングすることでおしゃれに存在感のある飾り方ができます。個性的な姿から、インテリアのアクセントとしても最適です。
着生植物という特徴を生かし、さまざまな飾り方が楽しめるのも、コウモリランの人気の理由です。
ここでは、コウモリランのおしゃれな飾り方を2つご紹介します。飾り方のコツを掴んで、素敵にアレンジしてみてくださいね。
コウモリランを“板付(板づけ)で壁掛け”
1つ目の飾り方は、着生植物である特徴を最大限に生かした、板や流木などに付けて飾る方法です。最も人気のある飾り方でしょう。板や流木の形や素材にこだわれば、おしゃれ度をアップさせることもできます。
そのまま壁に掛けるだけでも、インテリア性が高く存在感が出るでしょう。壁掛け以外にも、棚の上や床に立て掛けてもおしゃれです。
コウモリランを“苔玉を使ってハンギング”
2つ目は、苔玉を使ってハンギングする飾り方です。コウモリが羽ばたいているように見える葉の姿を発揮させることができます。見上げたときに、迫力と力強さを感じるでしょう。インテリアにこだわっている人にも、人気の高い飾り方です。
床に観葉植物を置きたくない人にもおすすめの飾り方で、空間が広く使えます。ただ、水を含むと重さが変わるので、重量には注意が必要です。
コウモリランは環境に注意して大切に育てよう
コウモリランは、独特なユニークな葉を持つ観葉植物です。もともと熱帯地域で自生している植物なので、水やりも少なめでいいですし、丈夫なので、初心者でも簡単に育てられます。
しかし、水やりや温度管理など間違った方法で育てていると、枯れてしまうこともあるので注意が必要です。今回ご紹介した必要な生育環境と枯らさないコツなどの育て方と、お手入れ方法を参考にして、ぜひ元気なコウモリランを育ててくださいね。